抄録
キラルなビナフチル誘導体は軸不斉により、円二色(CD)スペクトルにおいて1Bb
遷移に大きな励起子カップリングを示す。さらに、このような性質を示すビナフ
チル誘導体に分子内電荷移動(CT)相互作用を導入することにより、構造に変化を
与えることができると期待できる。CT性ビナフチル誘導体はCDスペクトルの
1Bb遷移において振幅(A = Δε1st - Δε2nd)= 560 M-1cm-1の大きな励起子カップリングを示したが、2,2’位を鎖長の異なるリンカーで結合することで二面角を固定したCT性ビナフチル誘導体では、A = 470(ブトキシ鎖)、440(プロポキシ鎖)、330(エトキシ鎖)となった。本発表では、これらの実験結果と量子化学計算により得られる理論CDスペクトルの比較、検討を行ったので報告する。