我々は高い安定性を示すリン複素環ビラジカルである、1,3-ジホスファシクロブタン-2,4-ジイルの汎用的合成法を確立している。本研究ではこの合成法に基づいたビラジカルユニットの集積化と、その物性解明を検討している。ホスファアルキン[Mes*C≡P] (Mes*=2,4,6-tBu3C6H2)と0.5 当量のt-ブチルリチウムから環状アニオン調製し、これに各種求電子剤と作用させることで、分子内にビラジカルユニットを2つ、または3つ導入したマルチビラジカルを、室温、空気中で安定な固体として合成することに成功した。得られたマルチビラジカルの酸化還元電位を測定したところ、ビラジカルユニット数に対応した数の酸化電位が観測された。また紫外可視吸収スペクトルを測定し、ビラジカルユニット数の増加に伴う吸収極大の長波長シフトが観測され、共役構造を経由しないビラジカルユニット間の分子内相互作用に起因すると考えられる興味深い性質が明らかとなった。