抄録
カチオン‐π相互作用は弱い分子間相互作用の一つであり、分子構造や反応性を規定する重要な因子として知られている。本研究では、ニコチン酸アミド誘導体
1、および分子内カチオン‐π相互作用を有する分子2に着目し、理論円二色(CD)スペクトルと実測のスペクトルを比較した。Boltzmann分布に基づくポピュレーションを加重平均した理論CDスペクトルは、溶液中での実測値をよく再現でき、
溶液中ではX線構造のみが重要ではなく複数のコンフォマーが重要である事が明らかとなった。カチオン‐π相互作用の有無による溶液中での構造の差異を検証
し、その作用が構造およびキロプティカル特性に与える影響について検討したの
で報告する。