主催: 基礎有機化学討論会組織委員会
共催: 日本化学会, 近畿化学協会, 大阪大学大学院グローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル研究教育拠点」, 有機合成化学協会(協賛), 日本薬学会(協賛)
カリックスフィリンパラジム(II)錯体1は、ホスホールとチオフェンで置換されたポルフィリン環にPd(II)が取り込まれた興味深い錯体である。通常、Pd(II)錯体への酸化付加反応は困難であるが、1ではHeck反応が進行することが示されており、1への酸化付加反応が進行することが示唆されている。この理由として1の特徴的な電子状態が関与していると考えられる。本研究では理論的研究により酸化付加反応と1の電子状態の関係を明らかにした。1へのPhBrの酸化付加が進行し遷移状態を経て生成系に到るにしたがい、カリックスフィリン配位子に局在化したHOMOから電子が減少し、生成系ではLUMOに変化してゆくことから、カリックスフィリン配位子は-2価から電荷的中性な状態に変化することが示された。この結果、1はPd(II)錯体であるが、酸化付加反応が可能であることを明らかにした。