2009 年 2009 巻 60 号 p. 25-29
イネ品種「中部32 号」で同定されたいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34 を含む染色体領域を,圃場抵抗性弱のイネ品種「コシヒカリ」に導入した準同質遺伝子系統(以下NIL)のいもち病抵抗性反応について調べた.個体レベルの反応として,接種後7 日以降に病斑面積率を測定した結果,NIL の圃場抵抗性は「コシヒカリ」と「中部32 号」の中間型を示した.また,細胞レベルの反応として,葉身透明化法により,接種96 時間後のいもち病菌の侵入に対するイネ細胞の反応を調べた結果,全ての品種でいもち病菌の侵入を許す頻度に有意な差は見られなかった.「中部32 号」では付着器下の細胞の褐変化,顆粒化,着色化の頻度が「コシヒカリ」に比べ有意に増加したが,NIL では「コシヒカリ」と有意な差がなかった.以上より,「中部32 号」の圃場抵抗性はPi34 以外の因子も寄与すること,Pi34 の作用によって侵入したいもち病菌の菌糸生長が抑制される可能性が示唆された.