北日本病害虫研究会報
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2009 巻, 60 号
選択された号の論文の65件中1~50を表示しています
特別講演
報文
  • 高橋 直子, 猫塚 修一
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 8-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    岩手県内で発生している,MBI-D 剤耐性イネいもち病菌のPot2rep-PCR 法によるフィンガープリント(FP)解析によると,耐性菌はIwa3 のフィンガープリントパターン(FP パターン)が優占しているが,A 町では特異的にIwa77のFP パターンが優占している.A 町内に広域的に苗を供給している育苗施設では,育苗期間中にハウス周辺に籾殻が放置されていた.この育苗施設で使用された種子,周辺の籾殻,および苗からいもち病菌を分離したところ,いずれからも耐性菌が検出され,Iwa77 のFP パターンの耐性菌は,種子では検出されなかったが,籾殻および苗から検出された.これらのことから,A 町では,Iwa77のFP パターンの耐性菌を保菌した育苗施設周辺の籾殻が伝染源となり,育苗期の苗感染した可能性が高いと考えられ,この苗が町内に配布されたことが,町内の栽培圃場で同菌が優占した原因であると推定された.

  • 小林 隆, 笹原 剛志, 神田 英司, 兼松 誠司, 石黒 潔, 菅野 洋光
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 12-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    東北地方では,冷害年に障害不稔とともに穂いもちによる減収が大きな問題となっている.冷害年に穂いもちが多発する要因の一つとして,出穂後の低温による穂いもち感染可能期間の長期化が考えられる.そこで,出穂後の気温と穂いもち感受性の関係を調査し,日平均気温の積算気温を用いて,各穂の穂いもち感染可能期間の範囲を明らかにした.出穂後の日平均気温の積算気温0-200℃日および50-300℃日の穂にいもち病菌が感染して,罹病籾率5%以上の籾・枝梗いもちおよび穂首いもちがそれぞれ発生する.穂いもちの感染危険期を出穂後の積算気温300℃日以内と見なすことで,イネ株内の感染危険期と感染可能穂率の関係を予測できる.株内の感染可能穂率が50%以上の期間は,出穂期間中の平均気温が18.7℃のときは18 日間だが,26.8℃のときは11 日間であった.イネいもち病は東北地方において最も重要なイネ病害であり,やませが吹き込む太平洋側の各県では特に冷害年に穂いもちが多発して大きな減収をもたらす.イネは低温に遭遇するといもち病菌に対する感受性が高まるため,いもち病の感染リスクが高まることが明らかとなっている(2-4).また,出穂後の低温によりイネの穂いもち感染可能期間が長期化することが,冷害時に穂いもちが多発する一因と考えられる.一方,穂いもちの発生が予想されるときは出穂後に追加の茎葉散布剤を散布する場合があるが,茎葉散布剤の散布晩限と出穂後の気温との関係は明らかとなっていないため,実際には効果の低い時期に茎葉散布剤を散布している可能性がある.そこで,本報告では,出穂後の気温と穂いもち感受性の関係について検討した.

  • 小泉 信三, 白土 宏之, 片岡 知守, 山口 誠之
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 16-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    直播適性の高い水稲品種「萌えみのり」といもち病圃場抵抗性強品種「ちゅらひかり」の密封式鉄コーティング種子を,2 年間,湛水高密度(乾籾6kg/10a) 散播直播栽培し,初発生期にいもち病の罹病株を移植し,本病の発生推移を稚苗機械移植栽培と比較した.また,両栽培で薬剤の散布量と散布回数を減らした本病の薬剤費低減防除を検討した.湛水高密度散播直播栽培の第3・4 世代の葉いもち発生量は稚苗機械移植栽培に比べ,同等か多った.一方,穂いもちの発生程度は,栽培法に関わらず出穂期とその前後3 日間の間の降雨日数が多かった区ほど高く,出穂期前後の降雨の影響を受けた.廉価な液剤の茎葉散布は粒剤の湛水散布より薬剤費を低減させたが,防除による増収および収入増を考慮すると最適な防除法とはいえない事例もあった.「ちゅらひかり」は湛水高密度散播直播栽培でも穂いもちへの1 回の茎葉散布だけで「萌えみのり」慣行防除区に近くいもち病の発生を抑制した.

  • 鬼頭 英樹, 善林 薫, 小泉 信三, 中島 敏彦
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 25-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    イネ品種「中部32 号」で同定されたいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34 を含む染色体領域を,圃場抵抗性弱のイネ品種「コシヒカリ」に導入した準同質遺伝子系統(以下NIL)のいもち病抵抗性反応について調べた.個体レベルの反応として,接種後7 日以降に病斑面積率を測定した結果,NIL の圃場抵抗性は「コシヒカリ」と「中部32 号」の中間型を示した.また,細胞レベルの反応として,葉身透明化法により,接種96 時間後のいもち病菌の侵入に対するイネ細胞の反応を調べた結果,全ての品種でいもち病菌の侵入を許す頻度に有意な差は見られなかった.「中部32 号」では付着器下の細胞の褐変化,顆粒化,着色化の頻度が「コシヒカリ」に比べ有意に増加したが,NIL では「コシヒカリ」と有意な差がなかった.以上より,「中部32 号」の圃場抵抗性はPi34 以外の因子も寄与すること,Pi34 の作用によって侵入したいもち病菌の菌糸生長が抑制される可能性が示唆された.

  • 佐山 充
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 30-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    The test tube culture method for multiplication of Polymyxa betae was applied to isolate and multiply P. graminis, the vector of wheat yellow mosaic virus.To isolate P. graminis from infested soil, wheat was cultured in test tubes(25mm diameter, 12 cm long)with a draining hole and filled with infested soil and quartz sand at a ratio of 1:1 or 1:4(v/v). Test tubes with seedlings were flooded with nutrient solution every other day or for six hours per day at 13℃. The isolates of P. graminis significantly multiplied in seedlings of susceptible cultivars(Hokushin, Horoshiri-komugi and Taisetsu-komugi)inoculated with resting spores(3×103 sporosori / plant)by the test tube method, using sterilized quartz sand.

  • 小澤 徹, 相馬 潤, 三浦 秀穂, 小池 正徳
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 35-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    コムギ赤かび病防除薬剤7 種のデオキシニバレノール(DON)汚染低減効果を検証した.メトコナゾール乳剤(1,000 倍,1,500 倍),テブコナゾール水和剤(2,000 倍)およびチオファネートメチル水和剤(1,500 倍)は,赤かび粒率,粒厚2.2mm 以上の粒全体(全粒)のDON 汚染および2.2mm 以上粒から赤かび粒を除いた外観上健全な粒(外観健全粒)のDON 汚染のいずれに対しても安定して高い低減効果を示し,イミノクタジン酢酸塩液剤(1,000 倍)もこれらに次いでDON 汚染低減効果が高かった.一方,クレソキシムメチル水和剤(2,000 倍,3,000 倍),プロピコナゾール乳剤(1,000 倍,2,000 倍)およびアゾキシストロビン水和剤(2,000 倍)は,赤かび病発病抑制に対する防除効果とDON 汚染低減効果が一致せず,発病小穂率に対する防除価に比べ,全粒および外観健全粒のDON 汚染に対する防除価が劣る傾向を示し,後者の低減効果が特に低かった.

  • 笹原 剛志
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 41-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    チオファネートメチル(以下TM)耐性ダイズ紫斑病菌に対する代替薬剤の効果とその年次変動を,2002 年~2008 年に検討した.代替薬剤として,アゾキシストロビン(以下AZ)水和剤とイミベンコナゾール(以下IM)水和剤の効果が高く,特に,AZ 水和剤では1回散布でも充分な防除効果が得られた.その他の薬剤は1回散布では充分な効果が得られない場合があった.AZ 水和剤とIM・エトフェンプロックス水和剤を用いて,1回散布による散布適期を検討した結果,両剤とも開花20 日~35 日後で効果が高く,その前後では低下した.既存の報告も考慮すると,TM 耐性菌存在下で紫斑病を1回散布で防除するには,AZ 水和剤が有効であること,2回散布体系では,開花20 日~40 日後の間に効果の高い薬剤を1回目に,その他の薬剤を2回目に散布することで効率的に紫斑病を防除することが可能と考えられた.

  • 笹原 剛志
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 45-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    宮城県のダイズ主要品種である「ミヤギシロメ」と「タンレイ」について,紫斑病に対する抵抗性を明らかにし,農薬節減栽培における利用を検討した.前者は晩生種で紫斑病に対する抵抗性は「強」,後者は中生種で紫斑病に対する抵抗性は「中」とされているが,これらの抵抗性の程度を2004 年に圃場試験により確認した.その結果,「ミヤギシロメ」は無防除で栽培しても紫斑粒の発生は極めて少ないのに対し,「タンレイ」では紫斑粒が多発したが,効果の高い薬剤の開花後25 日~35 日後の1 回散布で,十分な防除効果が得られた.これらの結果を基に,現地において実用規模の実証試験を2006 年から2008 年にかけて行った.その結果,「ミヤギシロメ」の無防除区ではいずれの年次でも極少発生で,薬剤散布区との差が判然としないのに対し,「タンレイ」については無防除栽培は難しく,薬剤散布を実施しても年次の変動は大きかった.宮城県では紫斑病の防除体系として,品種に関わらず開花後20 日~40 日後に1 回から2 回の防除を指導しているが,「ミヤギシロメ」では紫斑病を対象とした茎葉散布による防除は不要と考えられた.「タンレイ」では,効果の高い薬剤による防除が必須であり,農薬節減栽培を実施するためには,その他の耕種的防除も組み合わせる必要があると考えられた.

  • 池谷 美奈子, 石川 岳史, 荒木 英晴, 山名 利一, 白井 佳代, 古川 勝弘
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 51-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2008 年7 月上旬から,北海道網走地方のテンサイ圃場において,スポット状に黄化症状の発生が認められた.本症状の原因を特定するとともに,特に発生圃場が多かった訓子府町において,発生実態調査と収量調査を行った.市販のビート西部萎黄ウイルス抗体を用いた間接ELISA 法により黄化症状株を検定した結果,ウイルスが高頻度に検出されたことから,本症状の主要因をテンサイ西部萎黄病と診断した.発生実態調査では,移植栽培より直播栽培のほうが黄化症状の発生程度は少なかった.これは直播栽培の種子にコートされている浸透移行性殺虫剤による一次感染の防止効果と考えられた.収量調査の結果,黄化株では,見かけ健全の緑色株に比べて根重が25%,根中糖分が10%,糖量が30%減少した.この減収程度および現地圃場における本病の初発時期から,本ウイルスの感染は6 月後半に起こっていたと推定した.

  • 三澤 知央
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 55-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    In 2005 and 2007,44 isolates were collected from 23 fields where the leaf blight of Welsh onion was occurring,in Hokkaido. All the isolates were observed for their morphological characteristics and tested for their pathogenicity to Welsh onion using the wound and nonwound inoculation method. Forty-one isolates were identified to be Stemphylium vesicarium(Wallroth)Simmons and three isolates to be S. botryosum Wallroth. From these results, S. vesicarium was confirmed to be the major causal agent of this disease in Hokkaido. All 44isolates showed pathogenicity to Welsh onion determined using the wound inoculation method, however,only 22 isolates showed pathogenicity determined using the nonwound inoculation method. This result suggests that S. vesicarium and S. botryosum have a weak pathogenicity to Welsh onion.

  • 三澤 知央
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 58-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2005 年~2008 年に9 種類の薬剤のネギ葉枯病に対する防除効果を圃場で評価した.先枯れ病斑に対する防除効果は,いずれの薬剤も低い~なかった.斑点病斑に対しては,シメコナゾール・マンゼブ水和剤が高い防除効果を示し,次いでイミノクタジン酢酸塩・ポリオキシン水和剤およびアゾキシストロビン水和剤の防除効果が高かった.TPN水和剤およびイミノクタジン・アルベシル酸塩水和剤の防除効果はやや低かった.黄色斑紋病斑に対しては,シメコナゾール・マンゼブ水和剤およびイミノクタジンアルベシル酸塩・マンゼブ水和剤が高い防除効果を示し,次いでマンゼブ水和剤,TPN水和剤,イミノクタジン酢酸塩・ポリオキシン水和剤,イプロジオン水和剤およびイミノクタジンアルベシル酸塩水和剤の防除効果が高かった.アゾキシストロビン水和剤およびクレソキシムメチル水和剤の効果はやや低かった.

  • 齋藤 智子, 千葉 克彦, 阿部 亜希子, 岩舘 康哉, 赤坂 安盛
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 63-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    近年,岩手県内の露地夏秋ネギで,葉に発生した白色病斑が拡大して折損・枯死し,その後被害病葉上に菌核を形成する症状が確認されている.病徴,菌核の形態的特徴および分子系統解析による結果より,Ciborinia allii によるネギ小菌核病と診断した.県内の14 巡回圃場と花巻市の1 定点圃場の調査から,岩手県では,6~7 月中旬頃まで発病が継続すると考えられた.また県内での発生分布調査の結果,調査した11 市町村中10 市町村で発生が確認され,県内で広く発生していたものと推察された.

  • 岩舘 康哉, 吉田 樹史, 江口 武志, 庄司 新一郎, 高橋 達治, 秋山 博志, 猫塚 修一
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 67-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    ホウレンソウ萎凋病を対象としたクロルピクリン錠剤による防除において,処理量(慣行:10 錠/m2)の低減を目的とした防除試験を実施した.すなわち,被覆資材にガス難透過性フィルム(VIF)を用いてクロルピクリン錠剤を減量処理した場合の防除効果を,栽培条件の異なる4 地域で検討するとともに,メタ・アナリシスによってデータを統合評価した.その結果,クロルピクリン錠剤の処理量を8 錠/m2 とし,VIF で被覆する試験区(VIF-8 錠区)は,処理量を10錠/m2 とし,ポリエチレンフィルム(PE)で被覆する慣行区(PE-10 錠区)と同等の防除効果が期待できることを明らかにした.また,被覆下におけるクロルピクリンガスの保持量は,VIF-8 錠区とPE-10 錠区はほぼ同等で,大気中へのクロルピクリンガスの拡散は抑制された.

  • 角野 晶大, 白井 佳代
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 73-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    北海道では以前より,セルリー栽培において軟腐病とは異なる細菌性腐敗症状が発生していた.そこで,2006年6月に洞爺湖町における6 軒の農家ハウスにおいて,セルリーの葉柄のみが濃褐色に腐敗して軟腐病特有の腐敗臭のしない個体から細菌を分離した.罹病部からは,主に蛍光性色素を産生する細菌が多数分離された.これらをセルリーに接種すると原病徴が再現され,同一細菌が再分離された.細菌学的性質を調べたところ,既報のセルリー腐敗病菌の性質と一致した.これらにより,本細菌をPseudomonas marginalis pv. marginalis(Brown 1918)Stevens 1925 と同定した.北海道におけるP. marginalis pv.marginalis によるセルリー腐敗病の確認は初めてである.

  • 角野 晶大, 白井 佳代
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 77-81
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    発病の多いハウス抑制作型において,セルリー斑点病に対して薬剤を7 日間隔で散布したところ,薬剤により効果に違いがあり,カスガマイシン・銅水和剤,ポリカーバメート水和剤,アゾキシストロビン水和剤,ジフェノコナゾール水和剤は高い効果が,また,TPN 水和剤とノニルフェノールスルホン酸銅水和剤は,前者4薬剤と比較するとやや劣るが十分な効果が認められた.これら薬剤を14 日および21 日間隔で散布したところ,いずれも散布間隔が長くなるにつれ効果は低下したが,卓効を示す前者4 薬剤では,14 日間隔散布でも後者2 薬剤の7 日間隔散布と同程度の十分な効果が認められた.薬剤の特性に合わせた間隔で散布することで,本病に対する薬剤散布回数を削減できる可能性が示唆された.一方,チオファネートメチル水和剤は7 日間隔散布で全く効果が認められなかった.道内主要産地より採取した本病原菌176 菌株の全てが,チオファネートメチル水和剤に対して高度耐性を示した.

  • 角野 晶大, 新村 昭憲, 成松 靖, 松井 梨絵, 西村 俊一
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 82-87
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2007 年7 月上旬に北海道空知支庁管内栗山町の露地栽培,同年9 月下旬に同管内由仁町のハウス栽培のイチゴで株全体が萎凋する症状が発生した.クラウンを切断するとクラウンの外側から内側に向かって褐変しており,病変部からは単一の糸状菌が分離された.分離菌を接種すると原病徴が再現され,接種菌が再分離された.分離菌の培地上での形状,無性器官の形状,有性器官の形状,生育適温,ベノミルとジエトフェンカルブ添加培地上での生育率およびColletotrichum gloeosporioides の特異的プライマーによるPCR 解析の結果などから,本病をGlomerella cingulata(Stoneman)Spaulding & Schrenk(C. gloeosporioides(Penzig)Penzig & Saccardo)によるイチゴ炭疽病と同定した.北海道における本菌による本病の発生は初めてである.

  • 近藤 誠, 永野 敏光, 高橋 智恵子, 中村 茂雄
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 88-91
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    宮城県内のキュウリ栽培10 圃場から採取したキュウリ褐斑病菌について数種類の薬剤に対する感受性を検定したところ,県内にはチオファネートメチル剤,ジエトフェンカルブ剤,ボスカリド剤,ストロビルリン系薬剤に対して感受性の低下が認められ,耐性菌が分布していることが示唆された.チオファネートメチル剤とジエトフェンカルブ剤に対する耐性菌はいずれも最小生育阻止濃度が100ppm 以上の高度耐性菌であったものの,両剤に耐性を示す菌は確認されず,負の交差耐性が認められた.また,プロシミドン剤に対する耐性菌は確認されなかったことから,ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル剤,ジエトフェンカルブ・プロシミドン剤は褐斑病菌に効果があると推察された.ボスカリド剤については,一部の地域でのみ耐性菌が確認され,その地域では分離菌株すべてが耐性菌の圃場も認められた.ストロビルリン系剤については,検定したすべての圃場で耐性菌が確認された.

  • 原 裕芽子, 相内 大吾, 増田 俊雄, 関根 崇行, 小澤 徹, 小池 正徳
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 92-95
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    生物農薬として知られるLecanicillium 属菌の死菌処理による,うどんこ病の発病抑制効果をキュウリ子葉切片を用いて調査した.さらに供試したLecanicillium 属菌6 菌株の中から高いうどんこ病発病抑制の認められた菌株,および抑制効果がなかった3 菌株を選抜後,それぞれの生菌と死菌をキュウリ子葉の片側に前処理し,非処理葉のうどんこ病発病抑制効果を調査することで誘導抵抗性の有無について検討した.その結果,子葉切片では,死菌処理でうどんこ病に対する高い発病抑制効果が認められた.しかし,死菌処理をポット試験で実施したところ,処理および未処理葉の両方でうどんこ病発病抑制効果が劣った.生菌処理では処理葉および非処理葉ともにうどんこ病発病抑制効果が認められた.Lecanicillium 属菌の生菌処理14 日目で,処理葉で2.8~15×104 個/cm2,非処理葉で6.2~63×103 個/cm2 の本菌の定着が確認された.以上により,Lecanicillium 属菌によるキュウリうどんこ病の発病抑制効果の作用は生菌の状態での寄生や拮抗によるものが大きいと考えられた.

  • 山口 貴之, 岩舘 康哉
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 96-101
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    In Iwate Prefecture, the incidence of black root rot of cucumber caused by Phomopsis sclerotioides has been increasing. To prevent this disease, several Cucurbitaceae plants were examined as the resistant rootstocks for grafting to cucumber plants. Among Cucurbitaceae plants used in this study, several cultivars(Atom, Naga-tougan and Okinawakogata-tougan)of Benincasa hispida was found to be effective. However, the Atom cultivar showed inadequate adaptability for grafting to cucumber plants.

  • 木口 忠彦
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 102-104
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    メロン果実汚斑細菌病に対する有機銅水和剤,カスガマイシン・銅水和剤,ポリカーバメート水和剤,およびDBEDC 乳剤の防除効果を病原菌を接種した苗において検定した.また,有機銅水和剤およびカスガマイシン・銅水和剤について育苗期の頭上灌水による第二次伝染防止効果を調査した.その結果,苗における発病抑制効果および第二次伝染防止効果のいずれについてもカスガマイシン・銅水和剤が最も有効であった.

  • 山内 智史, 三浦 吉則, 白川 隆
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 105-107
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    Damping-off of broccoli(Brassica oleracea var. italica)was found in Fukushima Prefecture, Japan, in September 2008. Fungal isolates frequently isolated from diseased plants were identified to be Rhizoctonia solani Kühn on the basis of morphological and cultural characteristics, and were subdivided into AG-4 HG-I by anastomosis and PCR tests. Because it has not been reported as a pathogen causing damping-off of broccoli except for R. solani AG2-2 ⅢB,we propose R. solani AG-4 HG-I as another pathogen.

  • 堀越 紀夫, 藤田 祐子, 園田 高広, 平子 喜一
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 108-111
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    Since 2007, Phytophthora rot of asparagus(Asparagus officinalis L.)caused by Phytophthora sp. has been observed in Fukushima Prefecture, Japan. Symptoms of the disease were first observed in early June as soft rot of spears. Isolates produced oogonia and amphigynous oospores of 24 to 30μm diameter.Mycelial growth was optimum at 25℃with no growth above 35℃. This is the first report on the incidence of Phytophthora rot of asparagus in Fukushima Prefecture.

  • 菅原 敬, 松館 綾子, 佐藤 衛, 生井 恒雄
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 112-117
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    山形県内でルリタマアザミ(Echinops ritro)に国内未報告の病害が発生し,罹病部からBotrytis 属菌,Sclerotinia 属菌およびRhizoctonia 属菌が分離された.それぞれの分離菌株は接種試験により病原性が認められ,接種菌と同一菌が再分離された.分離菌は培養特性,形態的特長および分子生物学的手法によりBotrytis cinerea,Sclerotinia sp.およびRhizoctonia solani AG-1 IB と同定した.これらの病原菌によるルリタマアザミの病害を灰色かび病,菌核病および葉腐病と提唱する.

  • 越智 昭彦, 菅原 敬
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 118-121
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2008 年6 月から7 月にかけて山形県村山地域で,切花用として雨除けハウスで栽培中のルリタマアザミの葉身に,不整形の褐色病斑が発生し,罹病部からAlternaria 属菌を分離した.分離菌はルリタマアザミに病原性を有し,培養特性,形態的特徴および分子生物学的分類からAlternaria alternata(Fr.)Keissler と同定した.本菌によるルリタマアザミの病害は国内では報告がなく,ルリタマアザミ黒斑病(Alternaria leaf spot)と呼称することを提案する.

  • 高橋 智恵子, 山村 真弓, 月星 隆雄
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 122-125
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    宮城県内において,チコリー(品種:プンタレッラ)の葉身が褐変し,次第に株元まで及んで腐敗・枯死する症状が多発した.罹病部からはBotrytis 属菌が高率に分離され,これをチコリー健全株に接種したところ病原性が確認された.分離菌は培養特性,形態的特徴,rDNA-ITS およびG3PDH 領域の相同性からBotrytis cinerea と同定された.本菌によるチコリーの病害は国内では未報告であるため,本病をBotrytis cinerea によるチコリー灰色かび病(新称)としたい.

  • 赤平 知也, 山本 晋玄, 雪田 金助
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 126-129
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2008年9月26日の降雹により,青森県の一部リンゴ園で多くの果実が押し傷や裂傷を生じる甚大な被害を受けた.これらのうち,裂傷を生じた果実は収穫期までの樹上および収穫後の20~22℃の室温,あるいは2℃の冷蔵管理中に低率ながら裂傷部から腐敗した.収穫後の果実腐敗は室温管理に比べて,冷蔵管理で発生が少なかった.いずれの場合の果実腐敗からもBotrytis 属菌が高い頻度で分離された.

  • 猫塚 修一
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 130-133
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    リンゴすす斑病を主防除対象とした9 月の薬剤散布の省略を目的に,残効性が長い殺菌剤を選抜するとともに,これらを8 月下旬の最終散布剤とし9 月を無防除とした場合の防除効果を検討した.各種薬剤を8 月下旬に散布し,散布直後から果実を一定期間のみ自然感染させた曝露試験において,トリフロキシストロビン水和剤(Tri)およびイミノクタジン酢酸塩液剤(Imi)は,対照のフルオルイミド水和剤(Flu)に比べて,約3 週間の曝露でも果実の発病程度が低かった.特にTri の発病程度は約4 週間の曝露でも同様であった.8 月下旬の最終散布剤としてTri およびImi を使用した圃場での防除試験においても,対照のFlu に比べて防除効果が優れていた.以上から,残効性が長いTri またはImiを8 月下旬に散布することにより9 月の薬剤散布回数を従来より削減できる可能性が示唆された.

  • 伊藤 大雄, 藤田 隆
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 134-138
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    防除体系を改変しながら,リンゴの有機栽培を2003 年の収穫後に転換してから5 年間実施し,病害の発生状況を調査した.供試園地では,落葉搬出,耕耘等の耕種的な防除に加え,食酢,強酸性水,水和硫黄剤,ニンニク抽出液等様々な防除資材を年間延べ10~16 回使用した.5 年間を通した最重要病害は黒星病で,発病果率は2004 年には77%に達したが,その後防除体系の改変によって2008 年には5%に減少した.モニリア病も2004 年の被害は深刻であったが,翌年から激減した.ただし,すす斑病は発病果率が30%を超える年次があり,今後の課題として残された.その他,葉では褐斑病,斑点落葉病,果実ではすす点病,黒点病,輪紋病の発生が見られたが,2004 年の褐斑病を除いて,いずれも問題となるレベルではなかった.

  • 本田 浩央, 平澤 秀弥
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 139-143
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    リンゴとセイヨウナシ両樹種の共通防除体系構築を目的に2005 年から2008年に防除薬剤に関する試験を行った.6 月から8 月上旬は輪紋病に重点を置いた薬剤選択が必要なため,セイヨウナシ輪紋病に効果が高い薬剤の選抜を行った.10 日間隔散布ではジチアノン水和剤(フロアブル),イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤及び混合剤を含めた有機銅剤が高い防除効果を示した.また,14日間隔散布では,ピラクロストロビン・ボスカリド水和剤が高い防除効果を示した.これら効果の高い薬剤を用いた体系防除でも,輪紋病に対して高い防除効果が得られた.6 月から9 月まで,殺菌剤についてはリンゴとセイヨウナシの共通防除体系の構築が可能であるものと考えられた.

  • 菅野 英二, 藤田 剛輝, 尾形 正
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 144-147
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    リンゴとモモが混在する園地における共通防除体系の確立を目的として,リンゴとモモを適用作物とする殺菌剤の中から,モモホモプシス腐敗病に対して残効性の長い薬剤を選抜した.15 日間隔の薬剤防除試験では,イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤とピラクロストロビン・ボスカリド水和剤は対照のベノミル・TPN 水和剤に比べて優る防除効果が認められた.薬剤散布後の果実を一定期間自然感染させる曝露試験では,15 日間の曝露期間では両剤ともに高い防除効果が認められたが,20 日間ではピラクロストロビン・ボスカリド水和剤の防除効果が劣る事例もあった.ピラクロストロビン・ボスカリド水和剤の有効成分の果実表面単位面積あたり付着量は散布直後に比べて,散布10 日後,15 日後,20 日後にピラクロストロビンは93.5%,75.8%,27.5%,ボスカリドは99.4%,83.2%,28.4%に減衰した.

  • 佐藤 裕, 佐藤 玄, 上村 大策
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 148-150
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    2008 年および2009 年に秋田県内のニホンナシ園,23 園地から分離したニホンナシの紅粒がんしゅ病菌,計305 菌株を供試して,ベノミル剤感受性を検定した.その結果,MIC 値は1~5ppm および100ppm 以上にピークを持つ2峰性を示した.また,調査した23 園地中16 園地は感受性菌のみが検出され,低感受性菌は男鹿市と潟上市のみで検出された.

  • 菅 広和, 斎藤 真理子
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 151-154
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    岩手県病害虫防除所による近年のカメムシ類および斑点米の発生量に関する調査データを解析し,カメムシ類と斑点米の発生量との関係および今後の防除対策の方向性について検討した.その結果,8 月下旬以降の水田でのカメムシ類発生量が斑点米被害の発生量に強く影響し,さらに,割れ籾の発生により被害が助長されることが明らかになった.また,斑点米被害発生量の多い年次は,8 月下旬から9 月にかけてカメムシ類の発生ほ場率が上昇する傾向が認められた.以上のことから,今後はこれまでの発生予察および防除指導に加え,8 月下旬以降のカメムシ類の発生量を考慮した予察手法および防除体系を検討する必要がある.

  • 横田 啓, 寺田 道一, 千葉 克彦, 鈴木 敏男
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 155-158
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    アカスジカスミカメに対し地域一斉防除する場合の薬剤散布時期は半数の圃場が穂揃期に達した時期の1週間後とする仮説を立て,広域的な規模で検証を行った.その結果,地域の穂揃期に達する幅が7 日以内の場合,半数の圃場が穂揃期に達した時期から約7 日後に一斉防除を実施することにより,アカスジカスミカメによる斑点米被害を抑えることが可能であった.ただし,水田雑草(ノビエ,イヌホタルイ)の出穂が確認される圃場では,1 回の防除では斑点米被害を抑えることは困難なため除草を徹底するか,追加防除を検討する必要があると考えられた.

  • 加進 丈二
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 159-162
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    イヌホタルイが発生した水田では,イネ出穂前の早期にアカスジカスミカメの侵入が起こり,水田内における本種の発生密度が高まるため,斑点米の発生を助長する原因となる.このため,イヌホタルイ発生水田における防除適期は,発生のない水田と異なると推測された.そこで,イヌホタルイ発生水田において,出穂始め,穂揃期,穂揃7 日後と異なる時期に薬剤散布による防除を行い,アカスジカスミカメの発生推移および斑点米の発生頻度について調査した.その結果,穂揃7 日後に比べ出穂始めから穂揃期の薬剤散布は,斑点米の発生を効率的に抑制することが明らかとなった.

  • 川崎 聡明, 吉村 具子, 土門 清
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 163-166
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    山形県における2000 年~2008 年のすくい取り調査の結果,2000 年,2001 年,2007 年および2008 年の4 ヵ年にアカスジカスミカメの発生を確認した.2000年,2001 年の発生と比較すると2007 年,2008 年の発生は,すくい取り成幼虫数が多く,発生地域も県内全域に拡大した.また,2000 年,2001 年と比較して春季の発生時期が早く,6 月の発生量も多く,8 月前半から9 月前半にかけての発生量も多かった.有効積算温度および休眠卵産下に関する臨界日長から算出した各世代成虫の発生推定時期から,山形県では年間少なくとも3 回は発生していると考えられた.高温年が連続することがアカスジカスミカメの発生要因の一つであると考えられた.

  • 櫻井 民人, 榊原 充隆
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 167-169
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    The effect of the rice ripening stage on the occurrence of white-spotted rice grains caused by Trigonotylus caelestialium and Stenotus rubrovittatus was examined. The number of white-spotted rice grains per panicle did not differ significantly between the 2 bug species and also between 2 rice varieties, but a significant difference was observed among the 3 ripening stages. The numbers of affected grains at 31 and 40 days after heading were more than the number noted at 22 days. More grains were affected by T. caelestialium at 31 days than at 40 days while more grains were affected by S. rubrovittatus at 40days than at 31 days. These results suggest that the occurrence of white-spotted rice grains is affected by the ripening stage and that this stage may differ between the 2 bug species.

  • 吉村 具子, 越智 昭彦
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 170-173
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    出穂21 日後以降の稲穂に対するアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫の放飼試験において,吸汁部位が白濁したのみで褐変化などの着色がみられない被害粒が確認された.着色の有無は,水稲玄米の農産物検査において品質を左右する項目であることから,このような形状の被害粒の発生状況を調査し,その発生要因について検討した.放飼試験の結果,登熟段階がすすんだ籾ほど通常の斑点米粒数の割合が低く,着色していない被害粒数の割合が高いという傾向があった.このことから,着色していない被害粒は登熟後期の吸汁により発生したと考えられた.また,着色していない被害粒は,圃場で栽培した「あきたこまち」からは確認されたが,「はえぬき」ではアカヒゲミドリカスミカメと斑点米が発生しているにもかかわらず、ほとんど確認されなかった.この品種間差は,カメムシの吸汁時期における玄米の含水率の違いにより生じた可能性がある.

  • 高橋 良知, 菊池 英樹, 新山 徳光
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 174-176
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    近年,秋田県内において,イネドロオイムシに対してフィプロニル剤の防除効果が低いという問題が生産現場から指摘されていた.そこで2007 年~2008年にかけてフィプロニル抵抗性個体群の発生状況と有効薬剤を検討した.本県において,県中央部以北の日本海沿岸部で広域的にフィプロニル抵抗性個体群が確認され,抵抗性個体群のLD50 値は感受性個体群に比べ最大で11.4 倍高かった.また,フィプロニル抵抗性個体群に対する各種薬剤の圃場試験を実施した結果,クロチアニジン箱粒剤,チアクロプリド箱粒剤,ジノテフラン箱粒剤,イミダクロプリド箱粒剤,チアメトキサム・ピロキロン箱粒剤では十分な防除効果が認められた.

  • 荒川 昭弘, 三田村 敏正, 平子 喜一, 松木 伸浩, 中村 淳
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 177-179
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    水田内の生物多様性調査における水生昆虫調査実施に先立ち,水中ライトトラップの侵入口を改良し,生物の捕獲能力の向上を図った.水中ライトトラップは捕獲容器内にLED 光源を配置し,これを夜間水中に設置することで,光に誘引される生物を捕獲することができる.しかし,日の出後に回収すると容器から生物が容易に逃亡することが観察された.同時期に多数箇所で調査を実施するためには,一度容器内に捕獲された生物のほとんどを逃がさないための改良が必要であった.今回,侵入口の内側に簡易な角柱の逃亡防止装置を付けることで逃亡個体数を少なく抑えることができた.

  • 木村 勇司, 石谷 正博
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 180-185
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    マメシンクイガの被害発生程度の異なるダイズ圃場において,成虫,産卵およびふ化幼虫の莢食入を調査し,合成ピレスロイド剤の散布適期および回数を検討した.成虫の発生が多い圃場では,ピーク時の産卵数が多くなるだけでなく発生初期の産卵が被害に結びつくほど多く,子実被害をもたらすふ化幼虫の莢食入時期が早まる.合成ピレスロイド剤散布によりふ化幼虫の莢食入を3 週間程度抑制でき,中発生圃場では産卵盛期に1 回,多~甚発生圃場では産卵盛期の1 週間前(8 月第5 半旬)と産卵盛期の2 回散布することで子実被害を効果的に防止できる.

  • 小野 亨
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 186-188
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    従来,宮城県におけるダイズの主要子実害虫は,吸実性カメムシ類,ダイズサヤタマバエ,マメシンクイガとされてきた.近年の栽培環境の変化の中で,改めて子実害虫による被害の実態を宮城県北部で調査したところ,フタスジヒメハムシとマメシンクイガによる被害が多く,その他の害虫被害は少ないことが分かった.また,フタスジヒメハムシによる被害は,ダイズの作付初年目から多く,マメシンクイガによる被害は,ダイズの作付4 年目以降に多いことが明らかになった.

  • 加進 丈二, 畑中 教子, 大場 淳司
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 189-192
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    ダイズ黒斑粒の原因種であるフタスジヒメハムシについて,ダイズ生育期間における発生消長と子実被害との関係を調査した.成虫の発生盛期は,発芽直後の6 月中旬,開花期前後の7 月下旬~8 月上旬,子実肥大初期の8 月下旬~9 月上旬で,それぞれ越冬世代,第1 世代,第2 世代と考えられた.晩播栽培では越冬世代成虫の発生を回避したものの,次世代以降の成虫発生により莢の加害が生じ,被害粒率は標播栽培と差が認められなかった.また,晩生品種では中生品種に比べ加害期間が長くなったが,被害粒率に明瞭な差は認められなかった.このことから,本種を対象とした防除対策は,作型や品種によらず重要であることが明らかになった.

  • 中村 智幸, 新山 徳光
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 193-195
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    秋田県内におけるウコンノメイガの越冬の可能性について有効積算温度を基に検討を行った.サンプリング時の幼虫齢期と有効積算温度により推定された生育ステージから,秋田県内においても越冬していると考えられた.また,調査を行ったアカソ群生地の全ての地点でウコンノメイガ幼虫が確認できたことから,越冬可能地域はほぼ県内全域と考えられた.

  • 三田村 敏正, 松木 伸浩
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 196-198
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    To establish the forecasting used pheromone trap and analyze the ecology of Pleuroptya ruralis, pheromone trap catches of P. ruralis in the soybean fields and the colonies of Boehmeria silvestrii were compared with the beating method(counting the number of adult looking by beating on foodplants leaves).In the soybean fields, the peak incidence of overwintering generation adults occurred clearer than beating method. In the one soybean field the pheromone trap catches and the number of beating method showed similar trends. But it was different in another field. The first generation adult catches emerged by soybean during mid-August to mid-September was very few compared with the beating method. This result suggests that the copulation activity of males are low. The pheromone trap catches in the colonies of B. silvestrii occurred in the mid-July, during mid-September to late October.

  • 東岱 孝司
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 199-203
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    ダイズシストセンチュウ(SCN)レース3 に抵抗性を示すとされる「下田不知」由来の抵抗性ダイズ品種「トヨコマチ」は,SCN レース1 存在下においてSCN の被害により減収した.SCN レース1 発生圃場におけるオキサミル粒剤の効果について,「トヨコマチ」および感受性品種「ハヤヒカリ」を供試して検討したところ,本剤の30kg/10a 播種前全面土壌混和処理により両品種ともにシスト寄生程度が低く抑えられ,減収被害が軽減された.この傾向は播種時の線虫密度が中程度から比較的高密度でも同様であった.一方,6kg/10a 播種前作条土壌混和処理はシスト寄生程度の抑制が不十分で防除効果は低かった.

  • 武澤 友二, 岩崎 暁生
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 204-207
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    テンサイにおいて8 月下旬から発生するヨトウガ第2 世代幼虫に対し,昆虫生育制御剤(IGR 剤)を7 月上旬から8 月中旬に散布し,各薬剤の効果的な散布時期を明らかにした.フルフェノクスロン乳剤とノバルロン乳剤は7 月中旬以降,ルフェヌロン乳剤とテブフェノジド水和剤は8 月中旬以降の散布で被害を許容水準程度に抑制した.また,クロルフルアズロン乳剤は7 月上旬散布でルフェヌロン乳剤と同程度の効果があると考えられた.一方,テフルベンズロン乳剤は7 月上旬散布でほとんど効果が認められず,メトキシフェノジド水和剤は8 月中旬散布でも被害を充分に抑制できなかった.フルフェノクスロン乳剤は散布後40 日の時点でヨトウガ孵化幼虫に対して高い殺虫活性が確認され,散布後10 日から90 日でも目立った残留成分量の減少は認められなかった.

  • 増田俊雄
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 208-211
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    春まきキャベツにおける被覆植物(白クローバー)混植区と除草区での害虫発生量は,コナガでは区間に差が認められなかったが,タマナギンウワバ,アブラムシ類およびモンシロチョウは除草区よりも被覆植物混植区で少なかった.圃場に飛来するモンシロチョウ成虫数は,雄雌ともに除草区よりも被覆植物混植区で少なく,それに伴い産卵数が著しく少なくなった.被覆植物により寄主植物であるキャベツが隠蔽されたために,雌成虫の産卵行動が抑制されたものと考えられた.

  • 山田 渓花, 相内 大吾, 増田 俊雄, 山中 聡, 小池 正徳
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 212-215
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    Lecanicillium 属菌を用いたコナガの微生物的防除を検討した.まず,生物的防除資材として有望なプロトプラスト融合株13 菌株中4 菌株がコナガに対して親株より高い病原性を示した.また,これら4 菌株にLT50 値の低い1 菌株を加えた第二選抜において,接種後6 日目における致死率が84.0%,LT50 値が2.6日と最も高い病原性を有する2aF27 を選抜した.この系統は食害面積割合も13.9%と最も低かった.しかし,Beauveria bassiana の高病原性系統MG-Bb-1 には劣った.コナガに対する病原性が低いとされるLecanicillium 属菌であるが,プロトプラスト融合を通して病原性が改変された可能性が示唆された.2aF27はコナガの微生物防除資材として利用できる可能性がある.

  • 橋本 直樹
    2009 年 2009 巻 60 号 p. 216-219
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    チンゲンサイでは,キスジノミハムシ成虫の食害が商品価値を低くするが,登録農薬が少ないことが防除上問題である.そのため,本試験では,チンゲンサイに農薬登録がある殺虫剤を用いてキスジノミハムシ成虫に対する有効性を検討した.その結果,チンゲンサイのキスジノミハムシに農薬登録のあるアセタミプリド水溶剤の他,ジノテフラン水溶剤,チオシクラム水和剤,シペルメトリン乳剤は効果が認められ,アセタミプリド粒剤は効果が高かった.

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