2010 年 2010 巻 61 号 p. 71-75
キチンを作物細菌病の防除に利用することを目的として,分子量3,000~50,000 に調製した低分子量のキチン20~25%を含む資材(LMC)のトマト斑点細菌病に対する発病抑制効果を検定した.まず,LMC を水で2,000 倍に希釈し,時期を変えてトマト苗の茎葉に1回散布後,病原細菌を接種した.その結果,LMC散布2日後に接種した処理区において顕著な発病抑制効果が認められた.この効果はLMC からキチン以外の物質を除いたものでも明瞭な発病抑制効果を示したことから,LMC に含まれる低分子量キチンが発病抑制効果を担う有効成分であると考えられた.圃場試験においてもトマト茎葉へのLMC 散布は斑点細菌病に対して,対照薬剤であるカスガマイシン・銅水和剤1,000 倍液と同等の防除効果を示した.また,かいよう病にも防除効果が認められた.LMC には接種に供試した病原細菌株に対して殺菌効果がないことから,発病抑制は宿主抵抗性の活性化によるものと考えられる.