2017 年 2017 巻 68 号 p. 179-184
冬期に気温の低い北海道東部において,テンサイ西部萎黄病の病原ウイルスBeet western yellows virus を媒介する主要虫種はモモアカアブラムシであることを明らかにした.本種の生態を調査した結果,十勝地方において無加温を含む冬期被覆ハウス内で胎生越冬していることと,自然条件下において秋期に雄成虫が発生しないことが確認され,不完全生活環であることが明らかとなった.また十勝地方で調査した結果,栽培初期のテンサイほ場へはモモアカアブラムシ,マメクロアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシの3種が飛来しており,ジャガイモヒゲナガアブラムシを室内でテンサイに寄生させた結果,継続的な増殖は認められなかった.北海道東部でテンサイ西部萎黄病が多発生した要因は,主要な媒介虫であるモモアカアブラムシがBWYV感染植物と同一ハウス内で越冬するため,早春にはすでに保毒媒介虫が存在し,5月20日頃からテンサイほ場へ飛来してBWYVを感染させるためと考えられた.