2021 年 2021 巻 72 号 p. 130-135
土着天敵による害虫抑制は,持続的なIPM体系の構築につながる重要な生態系サービスである.様々な環境に生息するクモは,害虫を抑制しうる土着天敵として有力と考えられている種群のひとつである.本研究は,土着天敵による害虫抑制の実現に向けた基礎情報として,青森県のゴボウ圃場において,クモの捕食に関わる機能数に影響する要因を検討した.6か所のゴボウ単作の圃場において,圃場周辺に生息するクモを捕獲し,採餌行動に基づく機能に分け,その数と周囲の景観構造との関係を検討した結果,地表徘徊性は全ての調査圃場で捕獲できた一方,造網性は森林に近い圃場でのみ捕獲された.限られたデータではあるものの,機能数と収量の間には負の相関関係があることも示唆された.これらの結果は,クモを利用した害虫抑制の実現に向けた重要な基礎情報になることが期待できる.