2022 年 2022 巻 73 号 p. 1-8
ジャガイモやせいも病が小さなRNAの感染で起こることが発見され“ウイロイド”と命名されて50年,現在まで30を超える種が報告されている.ウイロイドは植物の病気の原因として発見されてきたが,必ずしも感染した植物全てに病気を起こすわけではなく,検出技術の進歩に伴い無症状の植物からも検出されるようになった.
ホップ矮化ウイロイドは東北地方で流行した矮化病ホップから発見された.当初,日本のホップの風土病のように考えられたが,その病原はホップに限定されたものではなく,ブドウやカンキツ類に不顕性感染して世界中に拡がっていた.ホップ矮化ウイロイドのゲノム配列の多様性と宿主適応変異の解析から,ブドウに潜んでいるウイロイドがホップに伝染し,矮化病が発症したことが明らかになった.
近年,農産物種苗の国際化に伴い,危険度の高いポスピウイロイドに汚染された野菜や花き類の種苗が流通し,植物検疫上の課題となっている.