北日本病害虫研究会報
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トルコギキョウ立枯病発生圃場における土壌消毒前後および栽培後の立枯病菌密度と発病の推移
菅原 敬 渡部 由理黒坂 美穂高橋 佳孝
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2022 年 2022 巻 73 号 p. 48-54

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抄録

トルコギキョウ立枯病(病原:Fusarium oxysporum)は山形県内でも被害が拡大しており,生産上の重要な問題となっている.効果的な対策の構築のためには各種の防除効果を土壌中の生菌数で評価するのが望ましいが,本病についての調査事例はほとんどない.そこで最上地域および庄内地域の栽培圃場において本病の発生実態を調査するとともに,薬剤防除を行っている圃場を対象に,防除前~栽培後または越年後における土壌中のF. oxysporumの菌密度と開花期の発病株率を調査した.その結果,立枯病は生育不良等が発生した圃場の85%で確認され広く蔓延していることが明らかになった.クロルピクリン(商品名 クロピクフロー)の畝立後処理では畝および通路の概ね30 cm深まで防除効果が確認された.これより深い層では防除後も病原菌が検出される事例が多かった.このため土壌消毒後の圃場で発蕾期以降に急激に発病するのは,作物の根が防除効果の及ばない下層に伸長して感染することが原因と考えられた.また,栽培により菌密度が上昇し,発病株率が高い圃場ほど顕著であったが,防除の要否の基準となる発病株率は明確には出来なかった.転炉スラグによるpH矯正の効果はある程度認められた.

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© 2022 北日本病害虫研究会
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