2023 年 2023 巻 74 号 p. 104-111
ナシほ場において,市販のミヤコカブリダニ放飼およびカブリダニ類に影響の小さい防除体系(以下,天敵保護防除体系)がハダニ類およびカブリダニ類の発生に及ぼす影響について2020~2022年に福島市で検証した.天敵保護防除体系でミヤコカブリダニを放飼した場合は,ハダニ類の密度は他の区と比較して最も少なく,殺ダニ剤の散布を要しなかった.天敵保護防除体系のみの場合は,要防除密度を超えた年が2年あり殺ダニ剤の散布を行った.天敵保護防除体系ではカンザワハダニ主体の発生でフツウカブリダニが6月から断続的に確認された.慣行防除体系はナミハダニ主体の発生で,ハダニ類の密度が増加した8月以降にケナガカブリダニを中心にカブリダニ類の発生が確認された.ミヤコカブリダニ放飼区ではハダニ類は低密度であったが,調査ではミヤコカブリダニがほとんど確認されなかったことからその要因について明らかにする必要がある.