2023 年 2023 巻 74 号 p. 14-20
宮城県内で2021年に採取したダイズの種子から分離したダイズ紫斑病菌について,アゾキシストロビンに対する感受性を培地検定により評価したところ,農薬登録内容上の実用濃度である100 ppmより高い濃度で菌糸伸長が見られる耐性菌株が存在した.そこで各菌株のミトコンドリアチトクロームb領域の一部をPCRで増幅し,塩基配列を決定したところ,耐性菌ではG143Aの変異が認められた.この変異は既報のPCR-RFLP法による検定で識別可能であった.そこで,この変異を検出できるDNAマーカーとしてKASP法による一塩基多型の検出について検討した.得られた塩基配列からG143A変異を識別可能なKASP法用のDNAマーカーを作製し,リアルタイムPCR装置を用いて解析したところ,PCR-RFLP解析と同様にG143A変異を検出することができた.培地検定,PCR-RFLP解析とシーケンス解析,今回検討したKASP法で一致した結果が得られたことから,G143A変異によるアゾキシストロビン耐性ダイズ紫斑病菌の検出にKASP法が有効であると考えられた.