北里大学一般教育紀要
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原著論文
近代ロシアにおける職業技術教育機関卒業生の進路
―産業発展、社会階層の再編と工業学校―
畠山 禎
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2015 年 20 巻 p. 45-80

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抄録
 19世紀末~20世紀初頭のロシアでは、経済が急速に成長し、社会階層の再編が進行した。そう したなか職業技術教育機関、なかでも工業学校が担っていた社会的機能とはどのようなものだっ たのか。本稿では工業学校卒業生の職業選択実態や卒業生の職業とその社会的出身の関係を考察 し、学校の人材供給機能、工業従事者の再生産機能、社会移動促進機能を確認した。
 第1節では、資料集И・А・アノーポフ編『ロシアにおける中・下級技術学校と手工業学校の現 状を分析するための資料の系統的概観の試み』 (ペテルブルク、 1889 年)から卒業生の進路にかん する情報を抽出し、 1880 年代における進路分布を明らかにした。卒業生は主として工業関連の職 業を選択していた。工業学校は地元のみならず国内各地の工場生産や手工業、鉄道、電信その他 のために中下級技術者や熟練工を養成していた。
 第2節では、ロシア技術協会付属手工業学校の卒業生についてその職歴を追跡し、卒業生の初 職、初職とアンケート調査( 1912 年)時点の現職との関係、卒業生の職業と出身身分、親の職業 との結びつきを分析した。同校の事例からは、工業学校が工業従事者を再生産していただけでな く、官公吏、私企業の事務員、教員、その他、新中間層に分類される職業への就業機会を卒業生 に与えていたことが明らかになった。身分的には上位身分出身者であるほど上方への階層移動チ ャンスがあった。
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