2016 年 21 巻 p. 73-83
本論文の目的は多人種(multiracial)の人々にとって言語とアイデンティティーがどのような関係にあるのかを検討するための枠組みを形づくることである。
二言語使用者(bilingual)のアイデンティティーは他人との社会的交流、他人による自己カテゴリー化、他人の態度や視点の内面化の有無によって形成されると考えられている。第一部に当たる本稿では沖縄県のアメラジアン(AmerAsian)の言語的経験や歴史的背景を介してbilinguality(二言語並存度)及びbiculturality (二文化併存度)がどのようにこのような人々の世界観やアイデンティティー、そして社会的機会や境遇に影響しているのかを考察する。言語は他人とのつながりや関係を築く上で不可欠であり、民族の文化的知識や行動規範などの習得に直接関わる。言語は特に多人種(multiracial)のアイデンティティー形成過程において重要な役割を担い、個々人が二言語並存的、二文化併存的に自己を確立し、同時に特定の集団や社会の一員として受け入れられることに対しても影響する。