2017 年 65 巻 11 号 p. 341-347
人工衛星による高性能な観測を実現させるためには,観測機器自体の性能を向上させるだけでなく,観測性能に影響を及ぼす様々な性能劣化要因を改善することが重要課題である.それらの影響要因は指向制御系・熱制御系・構造系など複数の分野にまたがり,課題解決には分野横断的な技術検討が必要となる.高性能観測への影響要因を指向制御系性能の観点で分類すると,ポインティング性能とアジリティ性能に大別される.前者は目標の指向方向に観測機器を如何に高精度に指向維持させるかという準静的な制御性能を示す指標であり,後者は目標指向方向に観測機器を如何に素早く向けられるかという姿勢制御の機敏さを示す動的な制御性能指標である.本稿では,ポインティング性能とアジリティ性能を高い次元で両立させるためのキー技術である振動抑制型の高速姿勢マヌーバ技術について,近年の人工衛星の高性能光学観測実現を支える姿勢制御系コア技術として現状を紹介する.