飛行中の航空機から搭載物を分離する場合,母機に衝突する等の事故を防ぐため,実飛行で行う前に分離特性を地上で検証することは不可欠である.これには,ドロップ試験等の風洞での分離試験とCFD解析が用いられている.今後のステルス等の趨勢を考えた場合,搭載物を内装化し,遷/超音速で分離することが要求されると考えるが,このような衝撃波等を伴う複雑な流れ場について,風洞での分離試験及びCFDによる解析ともにあまり確立されていないのが現状である.こうしたことから,防衛装備庁(当時防衛省技術研究本部)及び川崎重工業(株)は,内装を含む搭載物の高速における分離時の空力現象を複合的に取り扱う研究(以下「本研究」という)を実施した.今回から4回にわたり,連載特集として本研究について解説する.本稿は,連載の始めにあたり,本研究の背景と全般概要を述べるものである.
展開型柔軟エアロシェルは,将来の革新的な大気圏突入システムとして期待されている.我々のグループでは,カプセル形状の本体の周りに取り付けられる円錐形状の薄膜フレアと,その外周に取り付けられたガス圧で展開し形状を維持するインフレータブルリングで構成される,薄膜フレア型の展開型柔軟エアロシェルに注目して研究開発を進めてきた.本技術に対する我々の研究開発活動の特徴は,大気球実験,観測ロケット実験,国際宇宙ステーション/「きぼう」からの超小型衛星の放出機会など,各種フライト機会を利用し,その都度,フライト実験機を開発し,実際に飛行させることで,各要素技術のフライト環境での実証や大気圏突入システムとしての機能検証を行ってきた点にある.本稿では,展開型大気圏突入機の研究開発の紹介とともに,我々がこれまでに行ってきた各種フライト試験の概要について紹介する.
本特集第3回では全電化衛星である技術試験衛星9号機に関して紹介した.本稿第4回では,日本の大学を中心としたホールスラスタ研究開発コミュニティにおける,独自性のあるホールスラスタ研究の状況を概観する.欧米各国において大電力電気推進機の開発が積極的に行われるなか,日本の大学はAll-Japanの研究協力体制のもと,独自性のあるホールスラスタシステムを開発するべく,RAIJINプロジェクトを発足させた.このプロジェクトにおいて,次世代の全電化衛星バスシステムをターゲットとして,5 kW級ホールスラスタRAIJIN94が開発された.性能試験の結果,RAIJIN94は同程度の電力レベルの海外企業製ホールスラスタに比肩する性能を達成した.今後試験設備の充実化とともに周辺研究の醸成が進めば,RAIJINプロジェクトにおいて,さらに独自性が高く競争力のあるホールスラスタシステムの開発が見込まれる.