日本航空宇宙学会誌
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特集 HTV搭載小型回収カプセルの挑戦 第7回
HTV搭載小型回収カプセル推進系の開発と作動結果
長田 泰一
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2020 年 68 巻 11 号 p. 322-327

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抄録

HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)は,宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機の与圧部搭載カーゴとして打ち上げられ,国際宇宙ステーション(ISS)で実験サンプルを地上へ回収するための実証機であり,2018年11月に国内で初めてISSからのサンプル回収ミッションを成功させた.実証技術の一つに,バンク角制御による揚力誘導技術があり,そのために姿勢制御用推進系を搭載している.この機能を実現するために搭載した姿勢制御用スラスタは,ISS安全要求に対応したコールドガスジェットシステムであり,熱防護材の壁面に収めるため,小型かつ断熱性を持たせる必要があった.国内初の金属積層造形によるチタン合金製を採用し新たに開発したものである.金属積層造形と精密加工を組み合わせた製造方法により,ノズルおよびスロート部の形状精度を確保することで,推力性能のばらつきを抑えた.実飛行において,誘導制御からの信号により推進系は正常に作動した.回収後の点検において,スラスタノズル含め外観上損傷は認められず,熱対策が適切であったことが示された.

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© 2020 一般社団法人 日本航空宇宙学会
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