2020 年 68 巻 12 号 p. 365-372
HTV搭載小型回収カプセルは,国際宇宙ステーション(ISS)からの我が国独自のサンプル回収,および揚力誘導制御技術や国産低密度アブレータによる熱防護技術の獲得を目的とした実証ミッションであり,2018年11月に飛行実証に成功した.システム全体を正常に機能させるためには,約4日間に及ぶ軌道周回中と再突入時の両方で,内部搭載機器やパラシュート等の艤装品を許容温度範囲内に収めるような熱制御が必要とされ,さらにアブレータ非実装部は高耐熱性の断熱材で保護する必要があった.また,再突入時熱設計の妥当性を検証するためには,断熱材単体およびシステムレベルで特殊な試験検証を行う必要があった.本稿では,熱制御系の概要と各種開発試験,および飛行結果を紹介する.