2023 年 71 巻 6 号 p. 156-160
航空機の軌道予測技術は,近年,盛んに研究開発が進められてきた航空管制官の支援技術を支える重要な要素技術である.特に航空交通管理の分野においては,地上にある航空交通管制システムが,限られた情報から精度よく軌道予測を行うことが必要とされている.従来の方法では主に,航空管制レーダーで取得できる航空機の航跡を微分することで航空機の速度を推定し,軌道予測に用いるという方法がとられてきたが,速度の推定において比較的大きな誤差が発生し,軌道予測の精度に悪影響を与えていた.本稿では,軌道予測技術について概観すると共に,現在導入が進められている航空機動態情報のダウンリンク機能(downlink aircraft parameters:DAPs)を用いることで,機上で取得した高精度な速度を地上システムにダウンリンクし,軌道予測精度を向上させる方法について紹介する.