日本航空宇宙学会誌
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特集 プラネタリーディフェンス:天体の地球衝突問題に対処する 第2回
実際に起こった天体の地球衝突とその被害状況
─地球史に刻まれた・人類史に影響した・自然災害となった天体衝突─
高橋 典嗣
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2024 年 72 巻 5 号 p. 149-155

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抄録

地球は,46億年前に誕生してから現在に至るまで,天体衝突を繰り返しながら成長してきた.月の表面には,微惑星衝突や小惑星衝突などの天体衝突により形成されたクレーターが多数存在するが,地球にはアリゾナのバリンジャー隕石孔など100程度しか残っていない.これは,地球の地殻と上部マントルからなるプレートが誕生と消滅を繰り返してきたためで,天体衝突が月に比べて少なかったわけではない.地球史の中で生命大量絶滅を引き起こした天体の地球衝突,人類史に影響を与えた天体の地球衝突,そしてここ約100年で自然災害となった天体の地球衝突についてレビューする.人類は,幸いにも天体の地球衝突による大きな自然災害を経験していない.しかし,太陽系形成過程から考えても,頻度は少なくなっているが将来において小惑星や彗星のような天体の衝突は起こらないとは断言できない.最大級の自然災害となる可能性を秘めている地球への天体衝突問題に対して,地球を守るために人類は,研究・観測・防災に取り組んでいく必要がある.

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© 2024 一般社団法人 日本航空宇宙学会
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