2020 年 70 巻 3 号 p. 255-260
症例は76歳の男性で,食思不振,腹部膨満感を主訴に受診した.初診時,腹部に圧痛はなかった.血液検査にて,炎症反応,LDHの軽度上昇と,可溶性IL-2レセプターの著明な上昇を認め,腹部CTにて,下腹部に不整で不均一に造影される巨大な腫瘤を認めた.上腸間膜動静脈を含む腸間膜が腫瘤に圧迫され,sandwich signを呈していたため,腸間膜悪性リンパ腫と診断した.造影CTにて小腸に虚血を疑わせる所見があり,入院後,腹痛が増悪したため緊急手術を行った.回腸が20 cmにわたって壊死を起こしており,腫瘍とともに回盲部,回腸約100 cmを切除した.病理診断は,diffuse large B-cell lymphomaであった.同疾患はガイドラインに従うと,化学療法,放射線療法が基本であるが,本例のように,腫瘍の巨大化により腸管の血流障害を引き起こし,緊急手術要する必要が生じることがある.