目 的:多疾患併存の高齢者が増えている現状がある.ALSは指定難病で希少性を特徴とする中,がんを併せ持つALS療養者の増加がある.ALSとがんの併存症例の支援を考えるため,文献検討から既存の症例報告を整理し,基礎資料を得ることを目的とした.
方 法:医学中央雑誌(Web版)を用いて,「がん」と「筋萎縮性側索硬化症」のアンド検索を2010年から2021年までに限定して行った.該当文献23件から計26症例の詳細を分析した.
結 果:文献23件の筆頭著者は医師が18件と最多であった.26症例のうち70歳代以上は半数を占め,ALSの診断ががんより先であったケースは18例(69%),がんより後であったケースは3例,ほぼ同時期は5例(19%)であった.内容は外科治療9例,麻酔関係5例,化学療法や放射線治療関係4例であった.9例ががんの治療開始時にTPPVによる呼吸管理であった.3症例を除き,ほとんどは治療が奏功したという報告であった.
結 論:多職種・学際的で総合的な検討が必要であるが,近年の治療技術の進歩により,不治の病であるALSに対しがんの積極的治療が行われている状況が明らかとなった.本研究は,ALS患者への意思決定支援において参考となる1資料を提示した.