北関東医学
Online ISSN : 1881-1191
Print ISSN : 1343-2826
ISSN-L : 1343-2826
総説
ドライマウス(口腔乾燥症)の基礎と臨床
須佐 岳人金 舞五味 暁憲松崎 利行横尾 聡
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 74 巻 4 号 p. 271-282

詳細
抄録

 ドライマウス(口腔乾燥症)は,口腔内の水分が減少することによって起こる不快な症候を指す.唾液には潤滑作用,食塊形成作用,抗菌作用,再石灰化作用,口腔粘膜保護作用などの多くの機能があるが,ドライマウスではこれらの機能が低下し,口腔環境が悪化するのみならず,感染症や嚥下障害,栄養障害など生活の質(QOL)悪影響を及ぼし得る.本疾患の原因として,自己免疫疾患であるシェーグレン症候群や,頭頸部領域への放射線治療などの唾液腺に直接影響を及ぼすもののほか,降圧薬や精神疾患治療薬,抗アレルギー薬など薬剤の副作用,ストレスなどが挙げられる.ドライマウスへの対応としては,誘因となる疾患(糖尿病,貧血など)が明らかな場合はその治療を積極的に行い,薬剤の副作用が疑われる場合には,処方する主治医と連携し,減薬等を含めた対策を講じる.ドライマウスそれ自体への対応として唾液腺刺激薬や人工唾液の処方,唾液腺マッサージや保湿剤の塗布等が行われているが,いずれも対症療法であり,根治的な治療法の開発が求められている.

 臨床医は,国民の疾病予防,健康寿命の延長のために本疾患について正しく理解し,適切に対応することが不可欠である.本稿ではドライマウスへの対応について基礎から臨床までを解説する.

著者関連情報
© © 2024, 北関東医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top