日本の各所で人口減少と急速な住民の高齢化が進んでいる.特に産業に乏しく,自然環境の厳しい山間部でその傾向は顕著である.渡良瀬川上流域は他の河川上流部同様の環境要因があるが,それに加えて足尾銅山鉱毒事件,足尾銅山の閉山,複雑な自治体区分などの特殊要因も併せ持つ地域であり,人口減少も著しい.本調査では,渡良瀬川上流域の3つの自治体が交錯する地域において,人口動態,傷病者の受療状況を調査した.その結果,この地域は日本全国,あるいは群馬県全体よりも人口減少や高齢化が急速であり,傷病者の受療・搬送も困難な状況に陥りつつあることが確認された.今後,同様の地域は更に拡大することが予想され,地域医療を維持することが多くの山間部で困難になるものと思われる.