2024 年 74 巻 4 号 p. 305-310
術後補助化学療法を受けている中年期乳がん患者の語りから仕事の意味について分析した.その結果,「仕事は生きがい」,「職場の人たちとのつながり」,「病気のことを忘れる時間」という仕事が生活において重要な位置を占め仕事に充実感を感じるという意味があった.また治療による多種多様な副作用により退職を考えるという危機的状況のなかで,仕事は「自身の生き様を子どもに残す」,「築き上げた成果に責任を持つ」,「職場の人たちの役に立つ」ことであった.これは中年期の発達課題である生成継承性(generativity)や,それにより獲得される世話(care)に相当するものであった.対象者3名の語りから明らかにされた仕事の意味は医療従事者の新たな気づきとなるため報告する.