2024 年 74 巻 4 号 p. 299-304
症例は61歳女性.心窩部痛を主訴に当院を受診した.単純CT検査で小腸に腫瘤状の壁肥厚と口側腸管の拡張を認め,小腸閉塞の診断にて入院した.その後,小腸内視鏡検査を施行し,空腸に全周性の隆起性病変を認めた.生検の結果はadenocarcinomaであり,小腸癌と診断した.明らかな転移は認めず,開腹による小腸部分切除術を行った.手術所見はTreitz靭帯から50 cmの肛門側に腫瘍を認めた.切除範囲は腫瘍から口側と肛門側それぞれに5 cm以上の距離をとり,郭清はJ1a(第一空腸動脈)のSMA(上腸間膜動脈)分岐の根部を頂点として扇状に腸間膜の処置を行った.術後は特に問題なく経過した.小腸癌は極めて珍しく,腸管切除範囲,リンパ節郭清範囲などを規定した標準術式は確立されていない.これまでの報告を見るとリンパ節の郭清範囲としては中間リンパ節の郭清が最も多く行われている.補助化学療法を行わず,術後1年が経過したが再発の兆候はなく経過良好である.
原発性小腸癌は希少癌であり,標準的な治療法が確立されていない.郭清範囲や治療法について文献的考察を加え,報告する.