北関東医学
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カテコールおよびメラニンによる3価鉄・ADP複合体依存性リン脂質過酸化反応とその機序
パーキンソン病の成因との関連
外松 明美
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1994 年 44 巻 3 号 p. 251-262

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抄録

カテコールと鉄の相互作用を基礎的に検討し, さらに, カテコールないしメラニンと鉄による細胞毒性を生体膜脂質過酸化反応の観点から明らかにした.すなわち、ドーパと3価鉄・ADP複合体は0.1Mトリス塩酸緩衝液 (pH7.4) 中で錯体をなし, その構成比はドーパ : 3価鉄=1.3 : 1であった.この錯体は、さらに酸素分子が付加することにより, より強力な酸化剤となり, 生体膜リン脂質の脂質過酸化反応を惹起した.この反応には, スーパーオキシド, 過酸化水素, ヒドロキシルラジカル, あるいは一重項酸素の関与はなかった.ドパミン, エピネフリン, ないしノルエピネフリンもまた, 3価鉄存在下にドーパに比し弱いながらも脂質過酸化能を発揮した.また, メラニンは3価鉄・ADP存在下に生体膜リン脂質の脂質過酸化を惹起し, この反応にはスーパオキシドの関与が示唆された.
以上の結果から, 内在性のカテコールないしメラニンと鉄による脂質過酸化反応が黒質神経細胞の変性脱落の一因となり得ると考えられた.

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