1996 年 46 巻 4 号 p. 317-323
前立腺癌に対してLHRHA agonist (LHRHA) が使用されているが, その効果発現が他の内分泌療法に比べ遅いことや, 一過性のテストステロン上昇に伴う, flare upと呼ばれる臨床所見の悪化が問題とされている.これらに対し, エストロゲン (E) の併用効果を無作為割り付け法により検討した.
A法ではEをLHRHA投与2週前に先行投与し, さらにLHRHA療法開始後1週間同時投与した.B法ではEをLHRHA療法開始とともに1週間のみ同時投与した.C法はLHRHA単独療法であった。B法とC法のテストステロンはA法に比べ, LHRHA投与後14日間に渡り著明な上昇を示した.臨床効果をPSA, 日本泌尿器科学会の臨床効果判定法, ならびに自覚症状により評価したが, 明らかな差を示したのは, A法が他法に対して示したLHRHA投与開始後2週間におけるPSAのみであった.重篤なflare upと, 心筋梗塞と判別が困難であった症例をBとC法にそれぞれ1例ずつ認めた.A法に心臓の副作用が多かった.著明に不良な予後因子持ち, 心臓に問題を有していない症例ではLHRHA療法の前にEを投与するべきと考える.