日本脳神経漢方医学会誌
Online ISSN : 2759-4963
Print ISSN : 2759-498X
原著
眩暈診療における漢方薬奏功例の検討
郭 忠之
著者情報
キーワード: 眩暈診療, 脾虚, 痰飲
ジャーナル フリー

2024 年 9 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

「めまい」 は日常診療において多い症状の一つであり,その症状は多彩であり非特異的である。西洋医学診療においては原因となる疾患も様々である。

一方,東洋医学では虚・風・火・痰飲により生じ,五臓では “肝・脾・腎” の機能失調に関連するとされている。

我々は眩暈に対して漢方薬が奏功した39症例を経験し,苓姜朮甘湯が12例,苓桂朮甘湯が11例,半夏白朮天麻湯が6例であり,この上位3剤は痰飲に対する方剤で,全体の70%以上を占めていた。痰飲とは体内の水液代謝が失調し,身体のある部位に停滞することによって発生する病証をさす。

これら3剤を検討した結果,苓桂朮甘湯は胃腸障害や気の上衡と思われる頭痛・頭重感・頸部痛や動悸が,苓姜朮甘湯は冷えや腰痛が,半夏白朮天麻湯は胃腸障害 (脾虚) や倦怠感や冷えがあればよい適応と考えられた。

眩暈診療においては,まずは痰飲の可能性を考えて,その原因となる脾虚・腎虚・気の異常に着目して方剤の選択をすべきであると考えられた。

著者関連情報
© 2024 日本脳神経漢方医学会
次の記事
feedback
Top