高分子
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多孔質組織を対象とする高分子物性工学(II)-接着(その1)-
金丸 競
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1968 年 17 巻 8 号 p. 740-749

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抄録

米連邦政府が1960年公式名として採用したいわゆるMaterials Scienceに対しては,物性を経緯とはするが,材料開発という本来の使命を考慮するにむしろ工学の一分野と考えて,邦語としては「物性工学」がその適当な称呼と考える。今後益々開発の予想される複合材料が端的に物語るように,物性工学における高分子の占める割合は今さらいうまでもない。Materials Scienceのとくにミクロな立場に立つ分野が,ときに分子工学(molecular engineering)となづけられることに照応し,高分子分野の物性工学に対し「高分子物性工学(molecular eng. of high polymers)」なる名称は,よく内容と体を表わす称呼として提唱したい。さて多孔質組織を対象とする高分子物性工学には,高分子技術を工学の体系としてながめるに(1)非ニュートン高分子液の多孔質組織(一般に凹凸の多い固体表面を含める)内への浸透定着を取り扱う分野(含浸,樹脂加工,接着,積層,複合,塗装,印刷など)と,(2)ポリマーを多孔質組織(繊維,紙,布)とし溶液(溶媒,主として水および溶質または分散質)のこれに関与する吸着,収着,拡散を取り扱う分野(染色,サイズ加工など)は重要であるが,(1)のうちポリマー液の組織界面でのぬれ,接着,固定過程の物性論に対し,非ニュートンポリマー液の流動性の問題は一般の成形加工(成形,紡糸,成膜)性に連なる重要な工学特性として別個に取り扱った方が,いっそうの体系化のためにより合理的と考える。以上の観点から本論はその表題とする問題を(I)流動(浸透),(II)接着,(III)収着,拡散の3篇に分け,諸家のデータをもとに著者がはじめて導いた取扱を適宜配して全体の脈絡ある体系化を意図し,とくに(II),(III)は著者の,邦文では全く未発表の,成果を中心に展開するなど,その独創性には十分留意したつもりである。

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