抄録
[はじめに]
産業廃棄物中に含まれる毒性の強い重金属の土壌中での移行を予測するためには,土壌中におけるこれら重金属の溶解・沈着等の挙動を把握し,それらを支配する要因を解明することが重要である.土壌は,一般的に,種々の造岩鉱物および粘土鉱物,有機物以外に多量の非晶質物質を含んでいる.非晶質物質は反応性が富むために,非晶質物質に毒性の強い重金属が吸着していることが予想される.しかしながら,土壌中の非晶質物質と重金属の化学性を結び付ける研究は体系的に行われていない.これらの研究を発展させるために,土壌中の非晶質物質と重金属の関係を知ることは第一歩となる.
[試料]
試料は茨城県笠間市山中のカコウ岩を母材とする褐色森林土である.採取した土壌は地表から深さ100cmの土壌で,10cm毎に10等分した.各々の土壌中の水分と有機物を除去した後,水ひによって4μm以下の試料を得た.これら試料中の結晶の定量は粉末X線回折の内部標準法を用いて行い,非晶質物質の定量は全量から総鉱物量を差し引いた.これら非晶質物質の化学組成は,各試料のXRF全岩分析を行い,その値から各鉱物量に相当する値を差し引くことによって決定された.また,各試料の微量元素(AsおよびBe,Cr,Cu,Ni,Pb,Sn,Zn)はICP-MSによって分析された.
[結果・考察]
1---1.非晶質物質量と正の相関がある重金属(相関係数)
Cu (0.991),Zn (0.977),Cr (0.958),Ni (0.957),As (0.905),Pb (0.838)
1---2.非晶質物質量と正の相関がある項目(相関係数)
石英 (0.979),水分量 (0.923),カオリン鉱物 (0.831)
2.非晶質物質量と負の相関がある項目深度 (-0.951),無機物質の総量 (-0.792)
3.非晶質物質のSiO2成分と負の相関がある重金属
As (-0.814),Zn (-0.776),Be (-0.730),Cr (-0.699),Cu (-0.693),Ni (-0.688)
上記から,非晶質物質は重金属を収着させる媒体であることが示唆された.また,重金属の収着量は非晶質SiO2より結晶性SiO2の方が多いことが予想される.このことは,非晶質物質への重金属の収着メカニズムを知ることにつながり,現在考察中である.