抄録
1.はじめに
地球型惑星の中心核は、金属鉄とともに軽元素が含まれている可能性が高い。軽元素のうち、酸素、硫黄は最も有力な候補であると考えられている。Dreibus and Wanke (1985)は, Shargottite 隕石から火星の化学組成を見積もり、核はSに富んでいる。Ringwood (1977)は、火星は地球よりも低温で、より酸化的であると主張している したがって、核の組成モデルを議論するうえで、Fe-FeO-FeS 系の相関係を明らかにすることは重要である。Urakawa et.al., (1987) は15GPa までの条件下でFe-FeO-FeS 系の相関係を明らかにし、Fei et al., (1997, 2000) は 21GPa までのFe-FeS 系の相関係を、Li et al., (2002) は25GPaのFe-FeS 系の相関係を明らかにしている。本研究において23GPa でFe-FeS 系、Fe-FeO-FeS 系の高温高圧実験を行ったので、その結果を報告する。
2.実験方法
高圧力発生には、東北大学理学部設置のMA8型高圧発生装置を用いた。アンビルは先端が2.0mmのタングステンカーバイドである。圧力媒体にはZrO2の仮焼結体を使用し、試料を詰めるカプセルにはMgOを使用した。ヒーターにはレニウムの箔を筒状にしたものを使用し、測温にはW3%Re-W25%Re熱電対を使用した。出発試料は2種類用いた。86wt.%Fe-14wt.%S(粉末のFeとFeSの混合物)、81wt.%Fe-5wt.%O-14wt.%S(粉末のFeとFeS、Fe2O3を雰囲気炉で還元させたFe0.910)である。実験圧力は23GPaとした。実験は、まず圧力を上げ、その後、目的の温度まで上昇させる。5-20分の温度保持の後、試料は電源を切ることによって急冷させた。回収試料の組織観察には、反射顕微鏡と走査型電子顕微鏡によって行われ、組成分析にはEPMAを使用した。
3.実験結果
現在、23GPa における共有点温度を決定しつつある。Fe-FeS 系(86wt.%Fe-14wt.%S)では、1050℃で solid phases (Fe+Fe3S + Fe2S)、1100℃で liquid phaseであるという結果が得られた。Fe-FeO-FeS 系(81wt.%Fe-5wt.%O-14wt.%S)では、850℃で solid phases ( FeS + Fe3S2 + FeO)、900℃-1200℃ で solid (FeO) + liquid であるという結果が得られた。Fe-FeS 系に酸素を混入させてFe-FeO-FeS 系にすると約200℃溶融温度が下がるという結果が得られた。これらの結果より、火星の核は部分溶融している可能性が高いことが明らかになった。