抄録
1.はじめに
炭酸塩鉱物は海洋堆積物を構成している重要な構成要素であるとともに、沈み込みに伴い地球深部まで二酸化炭素をもたらす重要な役割を担っている。
マグネサイト(MgCO3)は堆積物を構成する炭酸塩の主な構成鉱物であり、これまでに行われた研究によりそれは上部マントル中で安定に存在する唯一の炭酸塩であることが知られている。最近の研究により、マグネサイトは下部マントルに相当する40-50GPaの圧力においてMgO + C (diamond) + O2に分解することが示された。そこで、本研究ではこの仮説の検証および、下部マントルにおけるマグネサイトの安定領域を決定する実験をレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルと放射光その場観察を用いて行った。
2.実験方法
出発物質には天然のマグネサイトに少量の白金粉末(8wt%)を混合したものを用いた。白金粉末はレーザー加熱時における熱の吸収材として用いるとともに、高温時の圧力マーカーとしても利用した。また、ダイヤモンドアンビルとサンプルの間には断熱材としてAl2O3 粉末を用いた。これらのサンプルはペレット状に成型後、Reガスケット中に封入した。
実験はSPring-8のBL10XUに設置されているレーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置を用いて温度15-110GPa、圧力1800-3000Kの条件下で行った。入射X線の波長は0.3571-0.4130オングストロームとし、ビームサイズは直径20マイクロメートルとした。
3.結果
本研究で行ったすべての温度・圧力条件において、マグネサイトの分解に関する証拠を得ることはできなかった。しかしながら、それまでカルサイト構造をとっていたマグネサイトが~115GPa・2200Kの条件下において、別の構造をとる新しい高圧相(Magnesite II)へと転移することを発見した。この結果はマグネサイトはマントル中2500kmの深さまで安定に存在し、下部マントルの大部分を通じて炭素Cの主要なホスト相になりうることを示唆する。さらに、マグネサイトの新しい高圧相(Magnesite II)はD''相においても安定に存在しうり、スラブ-マントル-核の相互作用において重要な役割を担う可能性があることを示す。