日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K1-02
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高圧鉱物の圧縮率
*小野 重明
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抄録
地球マントルのダイナミクスや化学組成進化を理解するためには、マントルを構成している鉱物や、鉱物の集合体としての岩石の物性を明らかにすることは不可欠である。マントル中は高温高圧状態であるため、その条件で出現する鉱物は、しばしば常温常圧条件では準安定な状態として存在する。精密な物性測定は常温常圧で行われることが多いが、このような高圧鉱物にとって準安定な条件で測定された物性は、本来、安定に存在する高温高圧条件における物性を反映しているのであろうか。そこで、本研究では、高圧鉱物の圧縮率を、安定に存在する圧力条件と準安定な圧力条件で測定し、それらを比べることにより、疑問を明らかにすることを試みる。高圧実験は、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用した。高圧状態の試料を直接観察するために、X線その場観察の手法を用いて観察した。X線実験はSPring-8のBL10XUとPFのBL13Aの放射光を使用した。X線は約0.42オングストロームに単色化されたものを用い、回折データはイメージングプレートで収集した。高圧条件では、試料中に大きな差応力が生じ、圧縮率を測定する際にはこの影響は致命的である。たとえ、静水圧性が高いと考えられているメタノール・エタノールの混合液やヘリウムなどの希ガスを圧媒体として用いても、地球マントルに相当する圧力条件では差応力の影響が非常に大きい。したがって、これらの圧媒体を用いて非常に高い圧力条件で得られたデータは、しばしば信頼性が著しく劣る。そこで本研究では、高圧条件でレーザーによる加熱を行い、試料に蓄積された応力を開放し、理想的な静水圧に近い状態でデータを収集する方法を用いた。この方法は、近年、主要な世界の放射光施設で行われていて、高圧条件では、十分満足しうる圧縮率の測定に成功している。本研究で圧縮率を測定した高圧鉱物は、Mg-ペロフスカイト、Ca-ペロフスカイト、スティショバイト、CF-typeアルミ相、Hexagonalアルミ相、Scheelite-typeジルコンなどである。測定の圧力条件は、常圧から100ギガパスカルの範囲で行い、この条件は、地表から、深さ約2200kmのマントルまでの領域に相当する。加熱温度は試料の状態に応じて約1500から2500ケルビンとした。いくつかの高圧鉱物について、本研究によって得られた圧縮率は非常に興味深い結果を示した。それは、高圧鉱物が安定な圧力条件で測定された圧縮率と準安定な条件で測定された圧縮率が見かけ上ことなった値を示したということである。例えば、Scheelite-typeジルコンは、安定な圧力条件では体積弾性率は約350ギガパスカルを示したが、準安定な条件では3割程度小さな値を示した。また、Mg-ペロフスカイトでは、準安定な条件では、安定な条件より1-2割程度小さな値を示す。この例とは反対に、安定な圧力条件と準安定な圧力条件で測定された圧縮率に差異が認められない高圧鉱物も観察された。例えば、スティショバイトは、どちらの条件でも体積弾性率は、ほぼ300ギガパスカルを示す。これらのことから、高圧鉱物が準安定な条件で行った物性測定の値は、再考を必要とする可能性があり、準安定な条件で得られた測定値を外挿して議論することは危険である。すなわち、高圧鉱物の物性測定は安定な温度圧力条件で測定することが望ましい。
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© 2003 日本鉱物科学会
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