抄録
太陽系の始原的物質であるコンドライトより太陽系最初期に形成された部分溶融物は、分化した隕石のユークライトとは異なるアルバイトAbとダイオプサイドDiよりなる安山岩的物質で1)、D. BogardによるそのAr-Ar形成年代は45.2億年ともっとも古い値を示す1)。このような物質は、IAB鉄隕石のカド・カウンティー隕石中に我々により最初に発見されたが1)、類似の物質でもっと大規模に濃集したものは、IEタイプの鉄隕石にも見つかった2)。しかし、IAB物質はコンドライト的物質の再結晶した部分と混在し、その組織は隕石衝突の際に撹乱されており、濃集機構を推定するには困難があった。今回報告するのは、新しく入手したカド・カウンティー隕石の2試料に発見された部分溶融物を主とする単独の包有物である。2種の試料より作成した2枚の岩石研磨薄片(PTS)の光学顕微鏡画像およびEMPAによる鉱物分布図につき、その形成機構を推論した。
1つのPTS(EH)ではケイ酸塩包有物の5分の1をしめる2mmに達する丸みをおびた自形のDiと、双晶したNaに富む斜長石Abよりなる。Abは小さな楕円状のカンラン石および斜方輝石をポイキリティックに包有する。Di結晶中にはカーブした線上に分布する不透明鉱物の包有物があり、斜方輝石の不定形の包有物もある。まわりに分布する鉱物粒は、DiとAbに比較して異常に小さく、まわりには2,3の閃マンガン鉱粒を含むトライライトがあり、金属鉄部分に移行する。もう1つのPTS(027)は大きな鉄隕石部分はなく、金属鉄とトライライトのネットワークが分布しているケイ酸塩包有物である。この中にEHと同じく大きな丸みをおびたDi結晶と双晶したAbがある。Abは楕円状のカンラン石をポイキリティックに包有する。これらの異常に大きな結晶に接して斜方輝石の結晶が1つあり、他の部分は金属鉄・トロイライトの脈が、小さな結晶の粒界に分布している。この斜方輝石は同時消光するきわめてきれいな結晶であるが、その中に少しカーブした面状に不透明鉱物によりデコレートされた転位の一部と思われる線分が平行に配列する。これはダイオジェナイトの斜方輝石やパラサイト中のカンラン石に見出されるティルトバウンダリーに類似したものが配列している。部分溶融物から結晶したと思われる大きな結晶は複雑な形をした金属鉄・トロイライト脈を包有しており、結晶方位はまったく同じである。これらの脈は部分溶融物の集まった大きな鉱物が成長した時にとり込まれたものと解釈できる。まわりの小結晶をとりまく金属・硫化物脈も、一部分の円弧を残し、1つのより大きな結晶の中に取り込まれたものも観察できる。このような組織とDiとAbの異常に大きな結晶の大きさは、これらの少数の結晶がグレイン・コースニングにより成長したものと解釈され、部分溶融液はその成長を助長するため、まわりのコンドライト的物質部分より供給されたものと思われる。部分溶融物を集めて成長した大きな結晶のまわりの小結晶部分も、大きくは成長しなかったコンドライト的物質の残りと考えられる。小惑星帯の微惑星で起こった部分溶融物の分離、濃集機構は、微少重力下でのFe-Ni-SメルトとCa,Na,Alに富む部分溶融液のマランゴニ対流で移動したことが提唱されているが、グレイン・コースニングも重要な濃集機構の1つと考えられる。
1) Takeda H., Bogard D. et al.: Geochim. Cosmochim. Acta (GCA) 64, 1311-1327, 2000.
2) Takeda H., Hsu W. and Huss G. R.: GCA, 67, No. 12, 2269-2288, 2003.