日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-17
会議情報

両錐水晶の成因について
*橋本 綾子長瀬 敏郎栗林 貴弘工藤 康弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

はじめに
 c軸の両方向にr{101}およびz{011}成長面からなる錐面をもつ両錐水晶は、特定の産地で産出する。両錐水晶の成因の一つは、一方向に成長した水晶が途中で折れ、その破断面が成長し新たに錐面が形成するというものである。破断面上にいくつもの錐面が現れ成長を始めるが、成長するにつれてこれらは統合し、一組のr面とz面からなる錐面となる。破断面上に現れた錐面はrもしくはz成長面とは一致しない。また、破断面からの成長は他の面の成長よりも速い、その内部組織は産地により異なる、などの特徴がある。共焦点レーザー顕微鏡およびカソードルミネッセンス(CL)による成長組織の観察ならびにその解析より、破断面からの成長過程の詳細を明らかにする。
研究方法
 試料には、宮崎県板谷産および中国四川省産の両錐水晶を用いた。頭頂部を通る(110)に平行な薄片と、(001)に平行な薄片を作成(厚さ1-2mm)し、観察用の試料とした。切断面を研磨後、カーボン蒸着し、この断面をCL(Gatan社製miniCL)で観察した。また、四川省産の両錐水晶は、c軸に垂直に頭頂部を切り出した後、銀蒸着し、頭頂部の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、共焦点レーザー顕微鏡(KEYENCE社製vk-8510)を用いて面角を解析した。
結果と考察
 CLによる結晶内部の成長縞の観察から、四川省産の両錐水晶は、一方向に成長した石英が途中で折れ、その破断面から成長してできたと考えられ、破断面から成長してできた頂点部にはスムースなr面ならびにz面とラフな(001)面がみられる。このラフな{001}成長分域の(110)切断面のCL観察では、c軸にほぼ平行な縞模様の組織と、それに直交するジグザグな成長縞がみられる。また(001)表面上には、いくつもの三角錐の成長丘が観察される。
 ある成長面と (001)面との面角をρ、(110)面からの方位角をφとすると、成長丘斜面のρは約45°、φは約0°である。破断によって生じたラフな(001)面からスムースなrおよびz成長面への変化過程では、(001)面上に三角錐の成長丘が現れ、その錐面はξ(2-12)成長面(ρ=47°、φ=0°)に近づくと考えられる。破断面上の成長では、破断面からの成長速度が他の面の成長よりも速い要因としては、ラフな(001)面の成長によるためと考えられる。成長速度の速い(001)面は縮小し、成長速度の遅いr、z面が発達することによって新しい錐面が形成されたと考えられる。
 板谷産の両錐水晶の(001)に平行な薄片のCL像には、φが0°の六角形の成長縞が観察され、四川省産試料と同様な成長過程により、両錐水晶が形成されたと考えられる。

著者関連情報
© 2003 日本鉱物科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top