抄録
天然の珪酸塩ガーネットは組成やイオン半径、格子定数とモルフォロジーの間に一定の関係が見られる(Kostov,1968)。本研究ではバナジン酸塩ガーネット;{NaCa2}[M2](V3)O12, (M=Ni,Mg,Cu,Zn,Co,Mn)に着目した。天然のバナジン酸塩ガーネットにおいては{NaCa2}[Mn2](V3)O12ガーネットは{110}からなる12面体を示し(Basso,1987)、{NaCa2}[Mg2](V3)O12ガーネットは{211}に富む{211}と{110}を示している(Krause,1999)。そこで上記6種類のバナジン酸塩ガーネットを合成し、モルフォロジーが組成や過飽和度とどのような関係にあるかを研究することを目的とした。
単結晶育成はフラックス法で行う。フラックスとしてセルフフラックスであるV2O5を用いる。目的物質であるバナジン酸塩ガーネットとフラックスであるV2O5は共に酸・アルカリに溶解する。そのため、常温に戻した後に取り出すことが困難である。そこで、合成は種結晶を用いて行い、高温で育成中の結晶を取り出すことにした。徐冷実験の準備として各ガーネットのシード挿入温度、徐冷開始温度および結晶を引き上げることの可能な徐冷終了温度を決定した。まず、十分溶融した試料をある温度まで急冷し、液中の温度が一定になった後、シードを液中に挿入し二日間保持する。二日後、引き上げたシードの溶融の程度や引き上げられるかどうかを観察した。その結果を参考にして実験を行い、以下の結果を得た。
{NaCa2}[Zn2](V3)O12ガーネットにおいて徐冷開始温度830℃、徐冷終了温度790℃の範囲で徐冷実験を行った。この結果、1mm程度の無色から褐色の結晶が多数、シードを媒体としてシード上にくっついて形成していた。モルフォロジーは{211}からなる24面体結晶であった。一方、徐冷終了温度を820℃にして、徐冷実験を行ったところ、{110}面からなる12面体結晶が得られた。このことは、Heimannらがガーネットの成長形では温度低下と過飽和度上昇に伴い{110}面より{211}面が優勢になると予測したとおりである。つまり、徐冷終了温度790℃が820℃よりも低温、高過飽和度状態にあるので{211}面の結晶が得られたと考えられる。
{NaCa2}[Zn2](V3)O12ガーネットにおいてHeimannらの予測を確認するため、低過飽和度および高過飽和度におけるモルフォロジーの再現性を見る。また、{NaCa2}[Zn2](V3)O12ガーネット以外のガーネットについても高過飽和度と低過飽和度における比較実験を行う。さらに、相平衡図から{NaCa2}[M2](V3)O12ガーネット(M=Ni,Cu)は低過飽和度状態での結晶育成は困難であるので、6種類のバナジン酸塩ガーネットを高過飽和度状態で、なおかつ過飽和度を一定にして合成実験を行い、組成の違いがモルフォロジーにどのように影響するのかを比較・検討する。