日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-20
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Coオケルマナイトの変調波ベクトルの温度依存性
*萩谷 健治大政 正明日下 勝弘大隅 一政飯石 一明
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抄録

【序論】
 Co-オケルマナイト(Ca2CoSi2O7)は室温において二次元変調を示す事が見いだされており、二つの変調波ベクトルはそれぞれk1=q(a*+b*), k2=q(-a*+b*)で表される(a*, b*は平均構造における逆格子ベクトル)。その構造は一つのCo四面体とその周りの四つの六配位Ca多面体からなるバンドルによって特徴付けられている。室温で衛星反射を示す不整合相は、高温では衛星反射が消滅しノーマル相へ可逆的に転移する。また低温では整合相へ転移することが見出されている(Riester & Boehm, 1997; Kusaka, 1999)。二つの変調波ベクトルのqは温度の違いにより1/3(整合相)から約0.28まで大きく変動する。Bagautdinov et al. (2002)はCa2ZnSi2O7についてqの変化の精密な測定を行い、qが 60Kから169Kの温度範囲で無理数(1-1/sqrt(2))に近い値でほぼ一定になる(q=0.2927)という、全く新しい現象を発見した。この現象が現れる原因を明らかにすることを目的として、構造変調・相転移等が詳しく明らかになっているCo-オケルマナイトについてqの温度変化を放射光を用いて測定した。
【実験】
 実験には、Floating Zone法により合成したCo-オケルマナイト単結晶を用いた。KEK・PFのBL-4Cに設置された四軸型回折計(HUBER)により衛星反射のプロファイルをステップスキャンにより測定した。使用したX線はE=18keVである。N2ガスフロー型試料冷却装置(Oxford)と自作のガスフロー型電気炉を用い、約90から500Kの温度範囲で測定を行った。q値の変化にはヒステリシスが見られることが判っているため、一旦530K程に加熱しノーマル相に転移させた後、室温まで温度を下げ、降温過程について約90Kまで測定した。この後、徐々に温度を上げ昇温過程について測定した。
【結果】
 測定した衛星反射のプロファイルをガウス関数によってフィッティングし、ピーク位置からqの値を各測定温度について求めた。この結果、Ca2ZnSi2O7で観測された無理数(1-1/sqrt(2))に近い値でほぼ一定になるという現象が約300から240Kの温度範囲で見いだされた。この値の他にも、qの値がほぼ一定になる傾向が見られた。この原因について、変調構造との関連から議論する。また、整合相へ転移すると主反射が2本に分離することを見出した。これは低温整合相が斜方晶系(空間群P21212)の結晶が双晶した物(双晶面:{110})であるという報告 (Hagiya et al., 2001)を支持する結果である。

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© 2003 日本鉱物科学会
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