日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-24
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アラゴナイト-溶液反応による CaCO3-CaMg(CO3)2 系炭酸塩鉱物の形成過程
*高山 尚己磯部 博志
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抄録

はじめに
 ドロマイトCaMg(CO3)2は,しばしばカルサイトCaCO3を置き換えて形成されている産状が観察される.カルサイトなどのCaCO3鉱物からドロマイトが形成されることはドロマイト化と呼ばれ,それを支配する要因は,温度,圧力(CO2分圧),固相の溶解速度や溶液の組成,イオン強度など多岐にわたる.特に,溶液からの核形成及び結晶成長速度は,固液反応によるドロマイト形成過程において,鉱物形成速度を決定する主要なパラメータであると考えられる.
 本研究は,常温常圧で準安定な CaCO3 相であるアラゴナイトとMgを含む溶液を用いて CaCO3-CaMg(CO3)2 系炭酸塩鉱物を生成し,結晶成長・相転移などの観察・分析によってドロマイトの形成メカニズムとそれを支配する要因を解明することを目的としている.
実験
 実験は,天然のアラゴナイト単結晶を粉砕し,CaCl2,MgCl2混合溶液 (各1mol/L, Mg/Ca = 1)と反応させることによって行なった.温度は100℃及び200℃,期間は100℃では最大16日間,200℃では最大6日間である.アラゴナイト粉末100mg と反応溶液 2ml をステンレス容器またはテフロン容器に封入し,恒温槽内に保持した.実験生成物は濾別,洗浄後105℃で乾燥し,XRD分析及びSEM/EDSによる観察・分析を行った.
結果及び考察
 100℃の実験では,16日間の実験でも出発物質のアラゴナイトに変化は現れなかった.200℃では,24時間以内にアラゴナイトの回折ピークは失われ,代わってLow-magnesium calcite (LMC) と High-magnesium calcite (HMC) が現れる.LMCは12時間以内のごく初期の実験生成物にのみ存在している.24時間以降の試料にはドロマイトの回折ピークが現れ,実験時間が長くなるに連れてHMCの回折ピークの減少と共にその回折強度は増加していく.HMCの回折ピークは48時間まで存在する.SEM観察においては,アラゴナイト,HMC結晶が溶解する過程が観察される.従って,ドロマイトの形成はアラゴナイト及び中間生成物が逐次溶解し,溶液から生成物が析出することによって進行しているものと思われる.EDS分析によると,HMCのMg含有量は30モル%程度であった.本実験により生成したドロマイト結晶の Mg/(Ca + Mg) 比は,48時間以降の試料では0.45前後の値でし一定であった.これらの結果から,前駆物質の溶解と,溶液からの結晶化によるドロマイトの形成速度とその支配要因,及びCaCO3-CaMg(CO3)2系炭酸塩鉱物の形成過程におけるMg/Caなどの元素分配について議論する.

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© 2003 日本鉱物科学会
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