日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K5-04
会議情報

微小重力を用いた高感度磁気異方性測定システムの開発
植田 千秋*田中 健太高島 遼一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

物質種の大多数はスピンを有さない反磁性体に属するが、これらの物質は反磁性磁化率の異方性のために磁場整列する可能性を原理的に有する。その整列には通常数万ガウス以上の強磁場が必要とされ、実験は反磁性異方性の大きな有機物を対象とすることが多かった。当グループでは無機酸化物においても、反磁性異方性エネルギーに起因した回転調和振動が0.1テスラ以下の低磁場で誘発されることを、コランダム、長石、石膏、マイカ、粘土鉱物などの基本的な無機絶縁鉱物で見出し、その観測から微弱な反磁性異方性を数多く検出することに成功した。このような値の集積は反磁性異方性の発生機構を解明するための基盤として重要である。しかし無機酸化物の場合、一般に高品位の単結晶のサイズが微小なため、上記の方法で得た感度でも検出できないことが多い。特に層状シリケートやゼオライトのように、結晶構造が特徴的で異なる異方性の値を持つと予想される物質については、データがほとんど得られていない。
 既存の磁気異方性測定では、水平磁場中に吊した試料に磁気異方性トルクを発生させ、これを吊糸のネジレ復元力とバランスさせて異方性を検出する。本研究では感度をさらに向上させる目的で、これまで測定の基準となって来た吊糸自体を系から排除した測定系を開発した。すなわち微小重力・真空中に非磁性結晶を浮遊させ、その回転振動の周期観測から異方性の検出を実現した。この方法を用いた場合、将来宇宙ステーションにおいて十分長い微小重力持続時間を得たとすると、現行の感度を数桁上回る感度の測定が可能となる。その予備段階として行なった、地上の無重力実験施設での実験結果を報告する。

著者関連情報
© 2003 日本鉱物科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top