日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K6-02
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Apatiteによるウランの固定化機構
大貫 敏彦香西 直文山本 春也*村上 隆
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抄録

1. はじめに
 ウランは物理的化学的性質が特異な元素であり、地球表層付近での移動は地球化学的重要性から注目され、ウランの移動に関する多くの研究が発表されてきた。近年ではウラン鉱山やウラン関連施設付近の環境修復や放射性廃棄物の処分に関係しても研究されている。本研究は、ウラン鉱山付近で見出されたapatiteによるウランのリン酸塩鉱物化を実験室で再現し、その機構を明らかにするとともに、その一般性について考察した。
2. 実験
 10 x 10 x 1 mmに切り出したapatiteの単結晶を4.0 x 10(-4) mole/lのウラン溶液に10日間、pH 2.2 - 4.0、25度で浸漬させた。実験後のpHは2.3から4.0であった。実験後、溶液のウラン濃度を液体シンチレーション法で測定し、ウランの取り込み量を計算した。ラザフォード後方散乱法(RBS)での測定のため4日間反応させた実験も行った。析出した鉱物はSEM-EDSとXRDで調べた。さらにapatiteからのCa, Pの溶解を調べるために、ウランを含まない溶液を用いて、上記の実験と同じ条件で、溶解実験を行った。実験後のCa, Pの濃度はICP-AESで測定した。このCa, P濃度と最初のウラン濃度から、EQ3NRでCaウラニルリン酸塩鉱物であるautuniteの飽和状態を計算した。
3. 結果および考察
 Apatiteの単結晶へのウランの取り込み量はpHが下がるにつれ増加し、通常の陽イオンの吸着とは逆の挙動を示した。溶液はautuniteに対し、不飽和であったが、apatite単結晶の周囲にはautuniteの層(最大で数ミクロンの厚さ)が沈澱していた。RBSでの分析によると、pHが下がるにつれ、即ちCa, Pの溶解が増えるにつれ、apatite表面のautunite層の厚さが増すことがわかった。また、autunite層よりさらにapatite側にはCa(おそらくPも)濃度がapatiteより低くautunite層より高い、またU濃度がautunite層より低い、厚さ100 nm以下のapatite浸出層(leached layer)が存在することがわかった。EQ3NRでの計算によると、バルク溶液よりpH、UまたはP濃度が一桁高くなる場があれば、autuniteが沈澱する。これらの結果は、浸出層はapatiteの溶解とautunite形成の場として機能し、autuniteは浸出層での局所的飽和により沈澱していることを示している。また、autunite層は厚さが厚くなるだけでなく、autuniteそのものの量も増えることから、autunite層でも局所的飽和によりautuniteの沈澱が起こっていると考えられる。
 また、比較のために0.2 mm以下のapatiteの粒子を使い、4.0 x 10(-4) mole/lと4.0 x 10(-6) mole/lのウラン溶液で吸着実験を行ったが、それぞれ、沈澱、吸着という機構であった。このようにウランの固定化機構は、ウラン濃度、apatite等のような鉱物の共存、水化学により異なるが、apatite表面でのウラニルリン酸塩鉱物の形成は、ウランの移動をコントロールする重要な機構である。

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© 2003 日本鉱物科学会
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