日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K6-05
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鶏の硬組織におけるCa置換体の挙動
*田賀井 篤平橘 由里香田原 友香
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キーワード: 硬組織, 骨髄骨, 卵殻
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抄録

 生体硬組織は生物の進化とともに、生体外部を殻で覆う外骨格から、生体内部の骨という内骨格へと変化してきた。化学組成の点から見ると、外骨格は炭酸カルシウムであり、内骨格はリン酸カルシウムである。このような成分や機能の変化と言う点から生体硬組織の進化については未解明な点が多い。本研究では、内骨格(骨)と外骨格(卵殻)の双方を持つ鳥類(家禽)を対象にして、生体硬組織を中心に組織におけるカルシウムの挙動をカルシウム置換体を用いて観察した。カルシウムとその置換体元素(Sr, Mn, Fe, Mg, K, Y)を含む飼料を1週間経口投与し、時間系列で雌の鶏の大腿骨(緻密骨、骨髄骨)と卵(卵殻、卵殻膜、卵白、卵黄)を採取して、XRFにより分析を行い、カルシウムとその置換体元素の変化を調べた。本研究に用いている鶏の雌は、産卵期に大腿骨内部に骨髄骨という特異な骨を持つ。骨髄骨は、卵殻を生成させるためのカルシウム貯蔵組織である(橘等、2003)。また、光学顕微鏡の観察から緻密骨から骨髄骨に連続的に移り変わっている層状の組織を見出した。そこではCa, P, Sr, Znの元素が緻密骨から骨髄骨にかけて段階的に変化していることを見出した。その際に、Ca, Pは緻密骨から骨髄骨にかけて減少する一方、Sr, Znは増加している傾向を見出した。また、卵黄は卵巣、卵黄膜は漏斗部で、卵白は膨大部で、卵殻膜は峡部で、また卵殻は卵殻腺部でそれぞれ形成される。卵形成のメカニズムは卵の各組織で研究が進んでいるが、受精から産卵に至る全過程を一つのシステムとして捉える研究は少なく、システムに関する定説は未だうち立てられていない。本実験では卵黄、卵白、卵殻膜、卵殻の各組織でKをキーにする特徴的な傾向を見出した。Kをキーにして実験は、受精から産卵に至る全過程を一つのシステムとして捉える可能性を示していると思われる。

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© 2003 日本鉱物科学会
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