日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K6-04
会議情報

吸着による鉱物の安定性の変化とその環境化学的意義
*佐藤 努福士 圭介
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
日本のいくつかの鉱山において、鉱山排水中に含まれるヒ素は排水からの二次生成物であるシュベルトマナイトに有効に吸着されて自然浄化されることが認められている。しかしシュベルトマナイトはゲータイトの準安定鉱物であり、その相変化とそれに伴うヒ素の挙動の理解は自然浄化プロセスの長期安定性評価に必須と考えられる。本講演では、As(V) 吸着したシュベルトマナイトの相変化遅延と遅延因子の解明、遅延効果を定量的に評価した事例を紹介するとともに、陰イオン吸着による鉱物の安定性の変化とその環境化学的意義について論ずる。
 As含有シュベルトマナイトの安定性を議論するために、酸性条件、25℃におけるAs(V)収着実験を行い、それぞれの溶解度について検討した。収着実験からpH3.3±0.1の条件においてシュベルトマナイトは1molのH2AsO4-と0.24 molのOH-を取り込むとき、0.62molのSO42-を溶液に放出する当量的な関係が認められた。この関係からヒ素を取り込んだシュベルトマナイトは純粋なシュベルトマナイトとAsを最大まで取り込むシュベルトマナイトの固溶体として記述できる。収着実験後の平衡溶液組成からヒ素を含むシュベルトマナイトの溶解度を見積もると、ヒ素含有量の増加に供ない溶解度が大幅に減少する傾向が認められた。また見積もられた溶解度を用いた地球化学モデリングから、シュベルトマナイトのゲータイト化はヒ素を取り込むことによって抑制されること、ヒ素を取り込むことによりシュベルトマナイトはアルカリ性環境においても安定に存在することが明らかとなった。このように、シュベルトマナイトは低結晶性・準安定な鉱物であるが、ヒ素の収着によって長期的にも安定なヒ素のシンクとして働くことが明らかとなった。
 以上のように、準安定相であるシュベルトマナイトが表層水中の鉄およびヒ素の溶存濃度コントロールに対し重要な役割を果たすことが示された。一般的に、シュベルトマナイトやハイドロタルサイト等、環境条件の変化によって簡単に相変化してしまう準安定相は、速度論的要因によって生成される安定相の先駆対物質とみなされている。したがってその生成は、熱力学的に生成が予言される安定な鉱物組み合わせ、およびその生成により達成される水溶液組成には影響を与えないと考えられてきた。しかし上記鉱物による陰イオン吸着プロセスは、本研究で定量的に示したように準安定相の安定性を増加させ、系の鉱物組成や溶液化学の進化の方向に変化を及ぼすと考えられ、その定量的取り扱いは地球表層での元素の循環を考える上でも重要となる。
著者関連情報
© 2003 日本鉱物科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top