日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K6-11
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山形県肘折高温岩体地熱系におけるスケール付着状況
*柳澤 教雄松永 烈杉田 創岡部 高志
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抄録

はじめに
  将来の地熱発電方法として、地上から河川水などを地下の高温部に注水し、熱エネルギーを取り出す高温岩体システム(HDR)が提案されている。2000年11月から2002年8月まで、山形県肘折地域においてこのHDRの循環試験が実施された。その際、地上配管や坑内でのスケール付着が確認された。本発表では、スケールの沈着メカニズムを考察する。
採取箇所と分析項目
 肘折ではHDR-2、HDR-3の2本の生産井があるが、その地上部の熱水ラインで採取を行った。また、坑内検層時に検層機により浮上したスケールも採取した。これらのスケールのX線回折および化学分析を行った。
結果
 HDR-2の地上部で観察されたスケールはほとんど方解石であった。一方、HDR-3では、70%以上がアモルファスシリカで残りは鉄鉱物10%、炭酸カルシウム、硬石膏で5%程度であった。一方、坑内検層時の浮上物はHDR-2、3ともほとんどが硬石膏であり、一部に炭酸カルシウム、アモルファスシリカ、磁鉄鉱が含まれていた。
考察
 地上部でHDR-2が方解石、HDR-3がシリカに富む傾向は、熱水組成がHDR-2でCa、HDR-3でSiO2に富む傾向、さらに熱水の温度と対応した。
 坑内の硬石膏は、坑内で熱水が加熱される過程で温度逆転層が生じたため、高温で溶解度が減少する硬石膏が過飽和になり析出したものと考えられる。この硬石膏の供給源は注入井から生産井の流路の花崗岩中の硬石膏脈と考えられている。地下で析出しなかったCa分は地上で方解石として沈積している。

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© 2003 日本鉱物科学会
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