日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K6-13
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カラシナのウラン吸着能について
*土肥 輝美鈴木 正哉田賀井 篤平
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キーワード: ウラン, カラシナ
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抄録

はじめに
 有害金属で汚染された土壌や水は多くの環境及び人体への健康問題を引き起こす。非放射性金属ではAs, Cd, Cu, Hg, Pb, Znが、そして放射性金属ではSr, Cs, Uが最も重要な環境に対する金属汚染物質である(1)ことが報告されている。
 また、アメリカ原子力研究所(USDOE) 内の半分以上の施設が、地下水や表層土を汚染する最もありふれた放射性核種はUであると報告している(2)ことから、原子力研究施設を持つ我が国でも、Uの環境中への拡散は今後も重要な問題として取り上げられると思われる。近年そのような環境汚染の修復方法の一つとして注目されているのがphytoremediationと呼ばれる技術で、植物を用いて環境中から汚染物質を取り除くことが試みられている。Cd, Ni, Znのような重金属のphytoremediationに関する研究では多くの情報が与えられているが、Uに関しては基本的な情報が欠乏している(3)のが現状である。従ってUのphytoremediation技術を確立するためにも、植物がその生体内でUを安定化させる機構を明らかにすることが必要であると思われる。
 本研究ではZn, Cu, Cd等の重金属を蓄積することで知られているカラシナ(Brassica juncea)を用いてUを吸着させ、植物生体内の各器官部位でのUの存在状態を明らかにすることを目的とした。
実験と結果
 実験では5μM・50μMのUO2(NO3)2溶液を調整し、採取したカラシナを10日間浸してUを吸着させた。ICPを用いて定量分析を行うにあたり、カラシナを各器官に分け、炉で60度で乾燥させた後に乳鉢で粉砕した。各粉末試料にHNO3を加えて一晩静置し、H2O2を加え、60度に温めた。
 そして更に150度で3時間温めて溶解させた各器官試料のU濃度を求めた。分析の結果、5μM、50μM・UO2(NO3)2それぞれの溶液に浸したカラシナの根、茎等でUが検出された。
 また、U吸着させた試料に凍結乾燥を施して、FE-SEMとEDSで50μM・UO2(NO3)2溶液に浸したカラシナについてUが検出された器官(根と茎)の断面の観察と定性分析を行った結果、茎では直径数μm程度の塊状でUの他にP,K,Cl,C,Oが検出された。
 また、根の断面でもU含有物質が見られ、これらの中にも茎と同様に直径数μm程度の塊状として存在しているものもあった。
 これらの結果から、Uが根や茎内で細胞内の他の元素と化合して安定化している可能性が示唆される。
参考文献;(1)Ilya et al., 1997,(2)Riley et al., 1992,(3)Ebbs et al., 1998

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© 2003 日本鉱物科学会
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