日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k10-02
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太陽系小天体(小惑星・彗星・カイパーベルト天体)の変遷
*佐々木 晶
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抄録

 小惑星、彗星、カイパーベルト天体などの太陽系小天体の研究が、近年非常に活発になり、惑星科学の分野でも存在感を大きい。特に、太陽系物質の起源と進化を探る上では欠かすことのできない研究ターゲットになっている。 隕石の母天体は小惑星と考えられている。しかし、反射スペクトルすなわち「色」には不一致(普通コンドライトに対応する小惑星が少なく、S型に対応する隕石が少ない)があり、長い間謎であった。それを解決したのが、宇宙風化作用の解明である。大気の無いシリケイト天体が宇宙空間に晒されていると、宇宙空間ダストの高速衝突による加熱により表面物質の蒸発・凝結が起きる。その際に、微小鉄粒子が生成されて、反射スペクトルの暗化・赤化を引き起こす。我々は実験室のシミュレーションにより、宇宙風化作用の素過程を明らかにした。最近では、小惑星の族の力学的年代と、宇宙風化度に相関があることがわかってきた。宇宙風化作用が年代学のマーカーとしても利用できる日が近い。さらに、始原的な炭素質天体でも時間とともに「色」の変化が起きていることが明らかになっている。 一方、1992年にはじめて発見されたカイパーベルト天体は、その後、続々と発見されて、現在では数は1000に近い。大きいものは冥王星の衛星シャロンを凌ぐ。最近の、力学的研究により、カイパーベルト天体のうち軌道が不安定になったものが、太陽系の内側へ運ばれ、木星族と呼ばれる彗星を経て、短周期彗星へと進化する道筋が明らかになった。カイパーベルト天体は、もともと遠方の氷微惑星が起源である。そのため、彗星を調べることが太陽系の外側での物質進化研究において重要な役割になる。また、一部の炭素質小惑星は、短周期彗星を起源としていると考えられている。短周期彗星起源であることが力学的に明確な天体は、将来の接近探査やサンプルリターンの重要なターゲットになるだろう。

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