日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k10-05
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太陽系固体物質の起源と進化に対する有機質星間塵の役割
*香内 晃
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抄録
 ハレー彗星の探査から星間塵中にはケイ酸塩と同等かそれ以上の有機物が含まれていることが明らかになった.しかしながら,これまでの惑星形成論ではケイ酸塩と氷のみが惑星材料物質として扱われ,有機物の存在は全く無視されてきた.私たちは大量に存在する物質の重要性を認識し,以下の実験的研究を行っている:a) 分子雲での氷への紫外線照射による有機物の生成と,その有機物がさらに低密度雲で強い紫外線照射を受けて変成する過程,b) 星間雲で形成された有機物(有機質星間塵)が原始太陽系星雲で受ける蒸発変成作用,c) 有機質星間塵の付着・成長過程,d) 有機質星間塵が炭素質隕石母天体に取り込まれて受ける水質・熱変成作用.これらの研究の概略を紹介し,それをもとに次のトピックスを議論する:i) プレソーラーダイヤモンドの起源 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドは炭素星や超新星起源ではなく次の2通りの過程で形成された:a) 分子雲で氷への紫外線照射,b) 炭素質隕石母天体中での有機物の水質変成・熱変成.このように考えるとこれまで説明のつかなかった SiCやグラファイトより2_---_3桁多量に存在すること,および炭素同位体は太陽系と同じであることがうまく説明できる.ii) 小惑星の急速成長 有機質星間塵の加熱蒸発実験から,有機質星間塵は小惑星領域に存在する事がわかった.衝突・付着実験から,mmサイズの有機質星間塵は5m/sでも付着することが明らかになった.これらの結果から,有機質星間塵が存在した2-3 AUでは,星雲が乱流状態になっている降着円盤時でも,星間塵の集合体の成長が急速に進んだと結論される.
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© 2004 日本鉱物科学会
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