日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k03-19
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SiをGeで置換した4種類の珪灰石の結晶構造について
*西 文人宮脇 律郎
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キーワード: 珪灰石, ゲルマン酸塩
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抄録

Wollastonite(CaSiO3)の結晶構造は、双晶モデルが伊藤(1953)により提案されたが、実際の結晶構造はMamedov and Belov(1956)、Buerger and Prewitt (1963)、Peacor and Prewitt(1963)らにより解明および精密化されており、それによると基本構造はSiO4による鎖がb軸に平行に走る構造である。今回はこのSiを、量を変化させながらGeで置換させた4種類のWollastoniteの結晶合成を行い、それらの結晶構造も解明したので報告したい。(化学組成及び格子定数)Ca(Si0.75,Ge0.25)O3(75Woと呼ぶ)a=7.970(1), b=7.369(1), c=7.114(1), alpha=90.07(1), beta=95.07(1), gamma=103.43(1)Ca(Si0.60,Ge0.40)O3(60Woと呼ぶ)a=7.983(2), b=7.382(1), c=7.128(1), alpha=90.07(1), beta=95.06(1), gamma=103.43(1)Ca(Si0.15,Ge0.85)O3(15Woと呼ぶ)a=8.076(1), b=7.494(1), c=7.232(1), alpha=90.10(1), beta=94.65(1), gamma=103.48(1)CaGeO3 (0Woと呼ぶ) a=8.125(2), b=7.554(1), c=7.292(2), alpha=90.11(3), beta=94.40(3), gamma=103.48(1)Geの含有量が増加するにつれて各格子軸の長さがほぼ直線的に増加していることが分かる。(SiとGeの置換)Wollastoniteの構造では、SiあるいはGeが占位できる結晶学的な独立なサイトは3つであり、それらをT1(座標でx=0.18, y=0.39, z=0.27周辺)、T2(座標でx=0.18, y=0.95, z=0.28周辺)、 T3(座標でx=0.41, y=0.73, z=0.05周辺)と呼ぶことにする。以下に最小自乗法で求められた各サイトにおけるSiとGeの占有率を表す。75Wo では T1=Si84.7(2)%+Ge15.3(2)%, T2=Si84.6(2)%+Ge15.4(2)%, T3=Si55.8(2)%+Ge44.2(2)%60Wo では T1=Si71.0(3)%+Ge29.0(3)%, T2=Si71.9(3)%+Ge28.1(3)%, T3=Si37.1(3)%+Ge62.9(3)%15Wo では T1=Si20.9(2)%+Ge79.1(2)%, T2=Si20.6(2)%+Ge79.4(2)%, T3=Si3.5(2)%+Ge96.5(2)% ここでの特徴としては、まずそれぞれ成分の異なるWollastoniteにおいてT1サイトとT2サイトのGeの占有率がほぼ同じであること、さらにT3サイトに比べ、T1とT2の両サイトにはGeが濃集できないということである。これらの原因としては、T1とT2はほぼ同様な幾何学的環境を有していること、さらにT1に配位しているO5、およびT2に配位しているO6が、それぞれ2個のCaにしか配位できず、その結果としてボンドバレンスが不足し、その代償としてT-O間の距離を短くしていなければならず、それらを少しでも長くしてしまうGeによる置換を許さないということではないかと考えられる。

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© 2004 日本鉱物科学会
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