日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k04-06
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ストロンチウムとあられ石ー方解石の析出
*砂川 一郎高橋 泰今井 裕之
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抄録
生命活動の結果できる貝殻や真珠を構成する鉱物は高圧型CaCO3のあられ石である。これは、CVDダイヤモンドと同様、熱力学的には期待できない相の方が安定相よりも先に核形成し,かつ条件が維持されれば安定に成長しうるという準安定核形成にかかわる問題である。準安定核形成の原因や機構の理解は、CVDダイヤモンドやOstwald step ruleのように、広い関心を呼ぶ一般的な研究課題である。Travertineは主として蛇紋岩地帯の破砕帯中に産し、あられ石と方解石の互層による縞模様で特徴づけられ、水溶液相からの沈殿で準安定核形成を支配している要因を解明する上で絶好の試料である。長野県下伊那郡大鹿村鹿塩鉱泉(この温泉は海水酷似の組成を持ち、古くから製塩が行われていた)近くの蛇紋岩破砕帯中に産するTravertine試料について、組織の観察、及び微小部蛍光X線分析(MXRF)を用いたElement Mapping(EM)及び定量分析を行い、Srの存在があられ石の準安定核形成にとって決定的であることを確証した。Fe, Mg,その他の陽イオンには相関は見られない。Srがある間はあられ石、なくなると方解石が沈殿し両者の互層構造がつくられる。あられ石、方解石のいずれの層でも、まずサイズの大きな結晶が不定方位で析出し、幾何学的選別作用により層に垂直に発達する束状結晶になる。これが炭酸塩鉱物析出の1サイクルで、温度変化などの条件変化に対応している。Srの存在はあられ石構造を持つ含Srあられ石構造が先駆体として形成されると考えるよりも、CaとSrのイオン半径の相違により部分的に配位数変化が起こり表面エネルギー項を変える役割を果たすと考えられる。核形成エネルギーは表面エネルギー項と体エネルギー項、したがって駆動力とが逆比例関係にあるので、Srの存在下では、準安定相のあられ石の方が安定相の方解石の核形成よりもエネルギー的に有利になるからである。本研究は、生鉱物中のあられ石とSrの関係を支持するとともに、準安定核形成に対して指摘されてきたMg, Srのうち、Srのほうがはるかに重要であることを示している。
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© 2004 日本鉱物科学会
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